大学生など3千人が来場
日本への留学を目指すインドネシアの若者らを対象にした「2025年度日本留学フェア」が23日、ジャカルタ市内で開かれた。日本の大学や教育機関が留学制度や高等教育に関する情報を提供し、日本への留学を促進することが狙い。所狭しを駆けつけた大学生ら約3千人が来訪し、担当者の説明に耳を傾けていた。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

最低200万円必要
この留学フェアは日本学生支援機構(JASSO)が主催。今年はスラバヤとジャカルタの2都市で開催され、約70の大学など教育機関が参加した。JASSOの担当者は「アニメやゲームなどの影響もあり、日本留学の人気は依然として高い」と話し、「大学側も近年のグローバル化の流れでインドネシアの留学生を獲得する意欲がある」と話す。
一方で「留学は1年で生活費を入れると200万円近くかかるのが普通で、インドネシア人の学生にとっては基本的に奨学金を得ないと難しい」と費用面での高いハードルがネックになっているという。
保護者「留学は投資」

インドネシア大学の工学部を卒業したばかりのガリさんと参加した母親のテテットさんは「留学は投資」と言い切る。「この子の兄は奨学金で日本に留学している。インドネシアの景気が悪いので、足元でしっかり教育をつけたい」と意欲は満々だ。ガリさんも「理系ではやはり、日本の大学の地位は高い」と熱心だ。先のJASSOの担当者によると「フェアに来る参加者の中で、本気度が高いのが保護者同伴の学生」という指摘もうなずける。
「英語」有無がカギ
費用のほかに留学の壁となるのが語学だ。日本の大学には英語で学生を受け入れる体制がまだまだ整っていない。
今回初参加した国立大学の担当者は「最低日本語検定2級でないと授業についてこれないが、学部入学時点でそんなレベルの学生はなかなかいない」と話す。また、別の国立大学の担当者は「文部科学省のグローバル化の方針に義務的に従っているところがほとんど。少なくとも学部では英語で授業できる教員がいない大学ばかりだ」と内情を吐露した。
実際、学部から英語で受け入れられる私立大学に学生の列は絶えない。立命館アジア太平洋大学(APU)の担当者によると、現在、約450人のインドネシア人学生を英語対応のコースで受け入れているという。担当者は「本学が2000年に設立されてからインドネシア人の先輩後輩のネットワークもあり、毎年留学生は多い」と話す。奨学金についても留学時の成績などにより30〜100%支給の制度を用意しているという。
担当者から説明を聞いていた南ジャカルタの公立高校に通う2年生のラフィットさんは「日本に行って伝統料理ルンダンなどインドネシア料理を広めたい」と話し、まず英語で留学した後、現地で日本語を勉強すると意欲を見せた。
慶応や早稲田といった英語対応をしている同様の大学も人気だ。特に、早稲田はインドネシア人の有名ユーチューバーが留学したことで近年応募が増えているという。
東京以外も人気

日本留学では必ずしも、東京や大阪といった大都市の大学ばかりが人気なわけではない。
南ジャカルタの私立高校に通う3年生のヌヌンさんは「岡山や広島なども都会より学費や物価が安くていいと先輩から聞いている」と地方の国公立大学に熱視線を送る。
JASSOの調査では、日本の外国人留学生数は2024年5月1日時点で33万6708人と過去最多を更新し、前年から約5万7000人、20%超の増加となった。出身地域別ではアジアが9割超を占める。
コロナ禍以降、留学生の受け入れは急速に回復している。日本側から見れば学生確保の好機である一方、学生と受け入れ先の教育機関のミスマッチや生活支援の不足といった課題も目立つようになっている。
今回のように、現地で制度全体と各校の情報をまとめて示す留学フェアは、「とにかく日本に行く」から「自分に合った進学先を選ぶ」へと質を高めるために有益な情報収集の場だ。インドネシアの若年人口の厚みを考えれば、こうした地道な情報提供が将来の人材交流の機会を増やすことにつながることが期待される。
