さながら「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」を体現するようなジャカルタの飲食業界。トレンドの移り変わりが激しいにも関わらず、トレンドを追いかけるのが大好きなジャカルタっ子を相手に長く商売を続けるのは至難の技と言っても過言ではないでしょう。しかし、数多いジャカルタの飲食店の中には「レジェンド」と呼ばれるような長く生き残るお店もあります。本日はそんなレジェンドの一つ、「Wong Fu Kie(ウォン・フー・キー)」をご紹介します。
【フードライター jakameshi(ジャカ飯)】
100年続くコタの伝説
ジャカルタで最初の街として発展したことで知られる北部のコタ・トゥア地区。現在でもオランダ植民地時代の建造物が残る観光エリアとして有名ですよね。
この地区は中華系インドネシア人が多く住むエリアとしても知られています。コタが地元の中華系インドネシア人の友人に「美味しいお店はどこ?」と聞くと少なくない頻度で登場するのが今回ご紹介する「Wong Fu Kie」です。
コタの奥地……車も入っていけないような細い路地の中。グーグルマップがなければ確実に発見することのできないような場所に、この店はあります=写真①。
お店の案内表示を頼りに、車を降りて徒歩で路地に入って行くと立派な店構え……はなく、キッチンが見えてきます。「え?お店はどこ?」と迷うことなかれ。そのキッチンを通り抜けると店内にたどり着くことができます=同②。
オーナーのフェンディさんのお話によれば、彼で3代目。現在は西のグリーンスダユシティや新興エリアのPIKにも大きな店舗がありますが、100年前にお祖父さんが開業したこの店もずっと守り続けているそうです=同③。
店内の壁には創業当時の写真が飾られています。眺めているとなんともノスタルジックな気持ちになりますね。100年の間にどれだけのドラマが生まれたのだろう……いや、何人の人がこのキッチンを通ってきたのか(笑)=同④。
おすすめメニュー
激辛大国インドネシアでは中華料理も火鍋のような辛めのものをいただく機会が多い印象があります。しかし、この店は「客家(はっか)料理」。味付けはしっかりしてるものの、辛さはそこまで強くありません。そしてコタということでビールも飲める。さらに、お酒の持ち込みをフェンディさんに確認したところ「無料だよ。酔い過ぎた人にはチャージするかもしれないけどね(笑)」とのこと。最高ですね!
お酒が好きな人も、お酒は飲まないけれど中華料理が好きな人も来るしかありません。ちなみに店内禁煙。子供や非喫煙者も安心です。
さて、そんなフレンドリーな老舗のウォン・フー・キー。ご参考までにいただいたメニューをご紹介します。
Mung Kiaw Mien
お店のメニューが非常に多いため、まずはフェンディさんのおすすめの「Mung Kiaw Mien」を注文=同⑤。迷わずおすすめされたのがこちらです。
100年店を支えてきた味?かは聞きそびれましたが、シーフードの味、セロリの味がはっきり残っていて確かにこれは美味しい。近所にこのミー(麺)があったら、こればかり食べてるかもしれません。
実際店内では店員さんがデリバリーの注文対応に忙しそうでした。近所に住んでいたなら、あの細い路地を通って店に来るよりもデリバリーの方が便利ですね。
酔っ払いスープ?
続いて「Cuyaus Kuah Arak 」=同⑥。
アルコールを飛ばして風味だけ残したスープかな?と予想して口に含んだところ、驚くほどお酒のスープ……いやこれはもはやお酒なんじゃなかろうか。食べながら酔っ払うかもしれない……恐らく一人で食べたら確実に酔うくらいにはアルコールが残っていました。
スープにはほんのりした甘さ。超強烈な甘酒というところでしょうか。筆者は嫌いではありませんが、これは人を選びそうな味です。スープの中には豚ホルモン。しかし具材の印象が薄れるほどスープの印象が強烈な一品でした。
日本人の好きなウナギも
「Wongsan Cha Fu Mak」もおすすめの一品=同⑦。「日本人はウナギが好きでしょ?」と。間違いないです(笑) カラッと揚がったウナギの食感がカリッカリで美味。そしてウナギ以上に野菜の調理が完璧!甘さと酸味のバランスが絶妙すぎる良いソースです。ウナギと野菜を一緒に食べるとパラダイス。いやぁこれは本当にたまらないですね。
絶対食べたいバビホン
今回いただいた中でいちばん印象に残った一品が「Babi Hong Sayur Asin」=同⑧。メニューを見てせっかくコタに来たのだからバビホン(豚肉の煮込み)が食べたい!ということでオーダー。
結論、予想を超えてくる美味しさ。何と言いますか、味の奥行きがすごかったです。これはもはや味のIT革命、いやAI革命や~(←わからない人は40代以上の上司や友人に聞いてください)。
これほどしっかりと丁寧に作られたバビホンは、コタと言えどもそう簡単には出会えないのではないでしょうか?この一皿を食べるために足を運んでも後悔はしないでしょう。
柑橘香る鶏肉料理
筆者はアヤム・ムンテガはあまり得意ではありません。なぜなら、ただ甘いだけの単調なアヤム・ムンテガが多すぎるからです。
しかし、この店の「Ayam Goreng Mentega 」は別物でした=同⑨。甘いだけではなく、全体の味が調和している印象です。いつもは一口で「ごちそうさま」のアヤム・ムンテガですが、これはたくさん食べても食べ疲れません。添えられてるJeruk(柑橘)をかけるとこれまた美味い。アヤム・ムンテガ自体を見直さないと……もしかして食わず嫌いだったのだろうか……。
店舗情報&まとめ
100年続くコタのレジェンド「Wong Fu Kie」をご紹介しました。 決してアクセスが良いお店ではないですし、普段日本人が行くエリアにあるわけでもありません。取材で訪れた日はさらに雨が降っていましたが、取材班一同に食後の感想は「また来たい!」というものでした。一度は訪れるべき名店と強くおすすめします。
ご注意いただきたいのは営業時間。なんと17時には終了します!平日の昼間、もしくは週末でスケジュールを調整してくださいね。 また、車では店の近くまで来れません。路地からは徒歩になりますのでご留意ください。雨季には傘を持ってきた方がよいでしょう。 そして小さいお店なので来店時は必ず予約を!左に記載されているWA(WhatsApp)に連絡すればフェンディさんが直接返事してくれますよ。たまに謎の日本語で返してくれますがそこはご愛敬。
それではまた次回!
