駐インドネシア日本大使が空席に

2025-12-02 03:45

後任の目処立たず

10月から臨時代理大使に就任した明珍充次席公使=外務省ホームページより

 日本政府が在インドネシア日本大使のポストを巡り異例の事態に陥っている。政府は11月28日の閣議で、正木靖・在インドネシア日本大使の退官を正式に決定したが、後任は空席のままで、「年度内に決まるかすら不透明」(外務省関係者)な状況となっている。

 正木氏の後任として、市川恵一内閣官房副長官補(当時)が10月16日付で就いた。ところが、高市早苗首相が自民党総裁戦で当選した直後の抜擢で、わずか5日後の21日付で在インドネシア大使を辞任し、そのまま国家安全保障局長に就任することとなった。結果として、在インドネシア日本大使は空席となっており、9月に赴任したばかりの明珍充次席公使が臨時代理大使に就任することで対応している。

 今回の人事は外務省の中でも「激震」と捉えられている。本来、大使交代の際は、新旧双方の任期を発令上重ねることで、在外公館トップが不在になる事態を避けるのが普通だ。冒頭の関係者によると「市川氏もインドネシア赴任を楽しみにしており、本人にとっても急な人事だった」という。

 大使は受け入れ先国からの同意(アグレマン)がなくては就任できず、天皇の承認も必要となる重職だ。後任を探そうにも「外務省幹級からの人選、手続き、インドネシア側との調整を最初からやり直さないといけないだけに下手したら1年かかるかもしれない」(別の外務省関係者)。

 インドネシアとの関係は、経済・安全保障の双方で日本にとって比重を増している。先月17日には日・インドネシア外務・防衛閣僚会合(いわゆる「2+2」)が開かれたばかりだ。日イ両国が距離を縮めようとする中で、日本政府の現場トップともいうべき大使の空席が長期化すれば、インドネシア側に誤ったシグナルや現地での調整力にも影響しかねない。実際、今回の人事は「相当な横車で、インドネシア側のメンツも潰した」(インドネシア政府関係者)との指摘も出ている。日本政府は次の大使就任を急ぐべきだろう。