あなたは全部飲んだことある!? インドネシア産ビール飲み比べ 一般向けビール編(前)

2025-11-07 07:14
 インドネシアと言えばお酒がNGなイスラム教のイメージが強いと思いますが、なかなかどうしておいしいビールがたくさんあります。そして……皆さん普段はビンタンビールを飲む機会が多いと思いますが、実はビンタン以外にも国産&独自ブランドのビールが多数あります。今回はスーパーでも手に入りやすい「一般向けビール(※)」全種(漏れがあったらごめんなさい)を、筆者が実際に「飲んで」3回に分けてご紹介します。

なぜインドネシアのビールはおいしいの?

今回レビュー対象としたインドネシア国産ビール全13種

 紹介に入る前に小ネタをお話します。インドネシアといえば国民の9割近くがイスラム教徒です。イスラム教と言えばお酒は原則的にNG。どうしても社会的にお酒は歓迎されません。幸いにもインドネシアではお酒が流通してはいますが、狂気の酒税で「下町のナポレオン」こと「いいちこ」が市販価格で日本円で7〜8千円ほどしていた修羅の国です(もはや高級酒のナポレオン)。


 でも皆さん、初めてインドネシアでビールを飲んだとき「おいしい」と思いませんでしたか?


 それはやはり「オランダ」の影響があるからなのでしょう。オランダは世界有数のビール大国です。数えればキリがないですが、ハイネケンを筆頭に有名なビールブランドを多数生み出した国です。


 歴史観についてここでは語りませんが、オランダは過去にインドネシアを統治していた時代がありました。そして1920年代にはハイネケン社によってオランダ人が大好きなビールをインドネシアでも製造していました。


 インドネシア独立後、ハイネケン関係会社の設備はインドネシアに国有化されますが、その後ハイネケンは再びインドネシアに進出して資産を再活用。現在ではPT Multi Bintang Indonesiaとしてビンタンビールやハイネケンを生産しています。


 長くなりましたが、オランダのレガシー(遺産)を引き継いだから、インドネシアのビールはおいしいのでしょう。そんな歴史に思いを馳せながら飲むインドネシアビールの世界。それでは一つずつご紹介しましょう!


【ご覧いただく上でのご注意】

 筆者はプロの批評家ではありません。そして、テイスティングとは言いつつも開けた缶はすべて飲んでいます。一口飲んで捨てるなんて、インドネシア暮らしの長い私にはできません。当然飲むのは複数日に分けました(3日間)。ということでコメントは酔っぱらいのたわごと程度で受け止めてください(笑)。とはいえ、飲んだことのない方にとっては幾ばくかの参考になると思います。

ビンタン ピルスナー

 やはり1本目はこれ以外ないでしょう。もう「いつものビンタン」としか形容できないほど飲んできた「ビンタン」です。この10年で何ガロン飲んだのでしょう……(遠い目)。

 ビンタンは皆さん十分ご存じだと思いますが、それでは記事にならないので…味のコメントをします。実に南国ビールらしい、グビグビと飲めるスッキリさ。苦味も強くなく万人受けする味と言えます。後味は少し甘めですよね。発酵のためか味のためか、原料に砂糖が入っているのが影響しているのかもしれません。南国系ではありますが「超ライト」というわけでもありません。そこがビール好きにも長く愛される理由なのかもしれませんね。


香り=3・味=3・喉ごし=4


ビンタン クリスタル

 市場に登場したのは2021年というまだ若いビール。ビンタン側が販売に積極的なのか、筆者の自宅近くのイオンでは割と頻繁にPROMO(販売促進)が行われています。安い時は1本200円近くまで値下がりする、リーズナブルなビールでもあります。

 肝心なお味は……「スムースコールドビール」と記載しているだけあり、飲みやすさに特化したようなビールですね。いわゆるライトビールに近いかもしれません。ビーチでキンキンに冷やして一気に飲みたい。筆者の妻はビール派ではありませんが、このビンタンクリスタルは好んで飲みます。逆に言えばしっかり目のキリン派のあなたには物足りないかもしれません。


香り=2・味=3・喉ごし=4・5

シンガラジャ

 シンガラジャビールはインドネシア・バリ島発祥のブランドで、かつてのバリの首都であるシンガラジャという都市の名前に由来しています。バリのあのゆったりとした雰囲気に合うような、軽やかでほんのりフルーティーな味が特徴です。よく言えばこちらも「ビールが苦手な人でも飲めるビール」のカテゴリーに入ります。口当たりが軽くて水のように飲める。炭酸も弱めです。ゴルフしながら炎天下で飲むと、飲み疲れせずに延々と飲み続けられるかもしれません。

 筆者的には、「軽すぎるかな」という感じもするのですが、あまりお酒を飲まない日本の友人が以前飲んだときはベタ褒めでした。ビールの好みは千差万別、人によるということですね。


香り=2.5・味=2.5・喉ごし=3

シンガラジャ バリ ペールエール

 こちらは比較的新しいビールだったような……ということで調べたら19年から販売開始されたビールとのことです。ここ数年でインドネシアのビールも本当に品数が増えましたよね。

 基本的にはシンガラジャピルスナーのようなフルーティーな味の系統です。大きな違いは甘さかもしれません。極端な解釈をすれば、「白ワインのようなビール」とも言っても過言ではないでしょう。ビールグラスではなく、むしろシャンパングラスに入れて魚料理に合わせて飲みたいところです。ジャカルタの自宅よりも、バリのビーチで飲めばまた印象も変わりそう(笑)。


香り=2・味=3・喉ごし=3

編集後記

 皆さんが普段手に取ることの多いビンタンに加え、見かけることは多いけれど手に取ることが少ないかもしれないシンガラジャまでを紹介しました。この4本だけでも味はまったく異なります。特にシンガラジャ バリペールエールは特徴のある味でした。次回はどのようなビールが登場するのか?ご期待ください!

(〈中〉に続く)



【一般向けビールとは】
厳密な定義はありませんが、大型スーパーマーケットで販売しているビール、とご認識ください。


jakameshi プロフィール情報

 ジャカルタ在住10年超。国際結婚組。北海道生まれ。冷え性が辛くて冬がないインドネシアに来ました。過去に月間10万PV程度の「ジャカルタ飯」という情報ブログを運営していました。久しぶりに物書きができて嬉しいです。ジャカルタを中心に、インドネシア在住の皆さんの食と酒が楽しくなるような情報をお届けします。