政府の有給インターン開始
卒業1年以内が対象
インドネシア政府は10月から大学や専門学校を卒業して間もない新卒層を対象とした有給インターンを開始した。地域ごとに定められた最低賃金を6カ月受け取りながら、受け入れ先の企業で研修する。この政策はプラボウォ・スビアント政権の雇用創出の目玉だが、即戦力が求められ最初の1社への就職が難しいとされるインドネシアの労働市場に一石を投じることができるのか。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

給与は最低賃金6ヶ月分
第1期が大反響
政府は今年10月15日を締め切りに、約1カ月間、2万人の第1期募集をかけたが、想定を上回る反響だった。最終的な応募者数は締切までに15万6159人と約7.8倍の競争率。一部の人気ポジションでは応募が1千人を超えるケースもあったといい、新卒層の本制度への関心の高さが浮き彫りとなった。受入企業数も1668社がプログラムに参加した。
第1期の盛況ぶりを踏まえて政府は第2期の計画の定員を一挙に4倍の8万人へ拡大した。これは第1期2万人と合わせ、年間10万人規模での実施を目指すもので、11月上旬には募集と選考を短期間で行い、可能な企業から順次研修を年内にも開始する方針が示された。スケジュールの前倒しにより、新卒たちの「待機期間」を短縮し、年度後半には研修成果の検証が行えるようにする狙いだ。
政府は成果指標(KPI)の設定と公開にも言及し始めている。第1期終了時には何名が研修修了し、その何割が正式雇用に結びついたかなどをトラッキングし、公表することで制度の有効性を測る方針。こうして明確化された指標を定期的に開示し、成功事例・失敗事例を分析することで、大学教育側へのフィードバックや次年度計画の改善につなげる。

都市部に集中
この制度の拡大にはいくつかの課題も指摘され始めている。受け入れ企業の都市への集中が代表的で、第1期では参加者はインドネシア全ての州から応募があったが、実際に受け入れ企業が集中するジャボデタベック(ジャカルタ首都圏)や西ジャワ州など都市部に地方出身の研修生が移動して働くケースが多かった。都市・地方間の雇用機会格差は大きく、地方の新卒者ほど機会にアクセスしにくい現状が浮き彫りになった。
経済界や学識経験者などからは「政府財源でまかなうインターン給与が今後も継続可能なのか」とする批判も一部から上がるが、プラボウォ大統領は「若者への投資は将来の生産性向上で必ず回収できる」と反論する。いずれにしても、社会に出て働き始める若者をいかに支えるかが国力を左右するのは間違いない。有給インターン制度は始まったばかりだが、中長期的な視野に立って効果を見極める必要がある。
次回は、新卒層の就職が困難な背景について詳しくみていく。(続)
