
この度ご縁があり、ジャカルタ日報にて一つ執筆の場を持たせていただくことになりました。過去に「ジャカルタ飯」というインドネシア情報ブログを運営しておりました jakameshi(ジャカメシ)と申します。
こちらの場では筆者の知見、私見、経験を元に「ジャカルタの食がもっと楽しくなる」ような情報を発信していければと考えております。今回はサンバルソース(以下サンバル)についてです。
本帰国前に絶対食べたい
インドネシアの推しサンバル5選
インドネシアの食を語る上で外せない要素の筆頭は、誰が何といってもサンバルでしょう。日本食に醤油が欠かせないように、インドネシアの食卓にもサンバルは欠かせません。まさに、No Sambal、No Masakan Indonesia(ノー・サンバル、ノー・マサカン・インドネシア)。サンバルがなければインドネシア料理じゃないのです。食べすぎるとお腹とお尻が火事にはなりますが、なければ不思議と物足りないものです。
ところで皆さんはサンバルの種類を意識したことはありますか?インドネシア料理全般にも言えることなのですが、一見すると似たような食事も、よく見てみると様々な種類があったりします。
筆者もジャカルタに住み始めたころは「インドネシア料理なんて全部同じ」だと思っておりました。特にサンバルなんて「とにかく辛いソースだろう」と……しかし、在住10年を超えた今では、インドネシア人とも語り合えるくらいにサンバルへのこだわりができました。
サンバルが分かればインドネシアの食事はちょっと楽しくなる。ということで、長くなりましたが本記事では「本帰国前に絶対食べたい!インドネシアの推しサンバル5選」を紹介します。
なるべく個性的な、分かりやすい味のサンバルを選んでいます。インドネシア料理屋さんに行く機会があれば、ぜひ探してみてください。 5選と書きましたが、独断と偏見でランキング形式で紹介します!異論は認めます!
■第5位 サンバルトマト(Sambal Tomat)

サンバルなのに辛さ控えめという、ある意味で「外道」なサンバルですが、「サンバルは辛すぎて苦手!」というあなたに食べていただきたい一品です。その名の通り、トマト入りのサンバル。トマトの甘酸っぱさが唐辛子の辛さと混ざり合い、絶妙な辛さに落ち着きます(でもやっぱり辛い)。どのような料理にも合わせられるので、使いやすいサンバルでもあります。
蛇足ですが筆者の義母(インドネシア人)が作るサンバルはいつもこのサンバルトマトです。
■第4位 サンバルダブダブ(Sambal Dabu Dabu)

第4位にしてすでに非常に難しい選択を強いられましたが、4位はサンバルダブダブです。筆者がジャカルタ生活を始めた1年目、インドネシア料理に飽きていた頃に出会い、衝撃を受けたサンバルです。「サンバルにもいろんな種類があるんだ」と、ある意味で開眼(かいがん)させてくれた恩人的サンバルとも言えますね。
サンバルダブダブはスラウェシ島マナド発祥のサンバル。マナド料理によく添えられます。赤と青の美しいトマトが目立ちますが、先述のサンバルトマトとは別物で圧倒的な辛さ。ただ、辛さの中にも柑橘系のすっきりした酸味があるのが特徴です。
マナドと言えば漁港です。カツオをよく食べることでも有名ですね。そのためマナド料理はどこか日本人の舌にも合うと、言われているとか、いないとか……そして当然、サンバルタブタブは魚料理にもピッタリです。
また蛇足ですが、今思い返せば1年目の筆者はマナド料理のカツオの味にどこか地元の味をかぶせていたのかもしれません(北海道の漁港出身です)。
■第3位 サンバルイジョ(Sambal Ijo/Hijo/Hijau)

「緑のサンバル」を意味するサンバルイジョ。つづりとしては「Sambal Ijo「Hijo」「Hijau」などを見かけますが、ここでは恐らく最もよく見かけるであろう表記の「サンバルイジョ(Sambal Ijo)」と書きますね。
サンバルイジョは日本人にもファンの多いパダン料理で使われるサンバルです。その名が示す通り、特徴は何といっても青唐辛子です。
ここから書くことは賛否両論を巻き起こすかもしれません。このサンバルイジョの青唐辛子、どことなく「ピーマンの美味さ」を感じさせるんですよね。苦味の中に旨味がある。そこにちょっとの辛さが混ざることで絶妙な美味しさを生み出しています。
筆者の中では完全にインドネシア版「ごはんですよ」。美味しいサンバルイジョがあれば白米をもりもりと食べれるのです。ただし、サンバルはどこまで行ってもサンバル。食べ過ぎると翌日後悔することを書き添えておきます。
■第2位 サンバルマタ(Sambal Matah)

もう日本人に人気過ぎてランキングに入れるかどうか迷いましたが、やはり入れざるを得ません。推しサンバルの2位はみんな大好きサンバルマタです。
ご存じの方も多いと思いますが、サンバルマタはこれまたみんな大好きバリ島のサンバル。マタ(Matah)はバリ語で「生」という意味。フレッシュな素材を加熱せずに混ぜるだけで作れます。食感の良いエシャロット、レモングラスの良い香り、そして強い辛味が混ざることでスッキリとした、それでいてしっかりとした辛さを生み出しています。
少し油の強いバリ風の豚ローストと合わせるのが定番ですが、最近では焼き鳥、ピザ、パスタなど様々な他国の料理にも使われ始めていますよね。やはり外国人受けが良いのかもしれません。
■第1位 サンバルアンダリマン(Sambal Andaliman)

筆者の中で不動の1位を維持しているのがサンバルアンダリマンです。サンバルアンダリマンは北スマトラ地方でよく食べられているサンバルです。
忘れもしない2022年。野暮用でスマトラ島北部のトバ湖を訪れることがあり、その辺りのローカルなお店に入ったのです。そこで食べたサンバルが今まで食べたことのない味でした。箸ならぬ、スプーンとフォークが止まらない。
「これは一体何だ?」と気になって調べまわったところ、サンバルアンダリマンということがわかったのです。アンダリマンとはスパイスの一つですが、日本だと「山椒」ということになるのでしょう。ちょっとピリッとした味が癖になることこの上なし。
ジャカルタではインドネシア人でも食べたことがない人が少なくありません。好きなサンバルは?と聞かれて「サンバルアンダリマン」と答えると「この外国人、只者じゃないな……」という空気を出せます。
ジャカルタではなかなかお目にかかることができませんが、ラポ(Lapo)と呼ばれるバタック料理のワルン(食堂)に行けば食べられます。ラポで豚のロースト(Babi Panggang、バビ・パンガン)や豚の血煮込み(Saksang、サクサン)と合わせると最高ですよ。
またはメダン空港のお土産屋にもあるので、メダンに出張する機会があれば探してみてください。最近だとオンラインショップも探せば見つけられるでしょう。
辛さの中に広い世界が広がる奥深きサンバルの世界。皆さんもお気に入りのサンバルを探してみてくださいね。
注・本文中のイメージ写真はAI生成画像です
