外国資本進出にかかわるBKPM新規則を早速解説!
2025年10月の外資規制改正で、外国資本会社の最低払込資本金が100億→25億ルピアに緩和。手続きも自己宣誓で簡素化され、中小企業も進出しやすくなった。改正の内容を対話形式で分かりやすく解説する。

ギマナくん: ゼンさん、ニュースでインドネシアの外国投資ルールが10月から変わったって聞いたよ。中学生の僕にもわかるように教えてくれる?
ゼンさん: もちろんだ、ギマナくん。インドネシアでは2021年に「ネガティブリスト(外国投資禁止・制限業種リスト)」が廃止されるという大きな規制緩和があった。その結果、多くの業種で外国企業が自由に参入できるようになった。ただし当時は「参入できる業種が増えただけ」で、必要な資本のハードルは依然として高かった。
ギマナくん: 参入できる業種が増えても、お金のハードルが高いと小さな会社は入れないもんね…。
ゼンさん: ああ、2025年10月にインドネシア投資省(BKPM)が新しい規則(BKPM規則第5号)を施行し、外国投資会社の資本要件を大きく緩和した。具体的には最低払込資本金が100億ルピアから25億ルピアに引き下げられた。25億ルピアは約2250万円程度で、以前の4分の1の負担で会社を設立できる計算だ。一点、注意点として払込資本は設立日から60日以内に入金すべしとこの法令では定められている。
ギマナくん: すごい!必要なお金がグッと減ったんだね。でも「総投資額100億ルピア以上」という条件自体は残っているの?
ゼンさん: いい質問だ。総投資額100億ルピア超というルール自体は原則維持されている。ただし、重要なのは、最初に全額を払い込む必要がなくなった点だ。新ルールではまず25億ルピアを資本金としてインドネシアに払い込み、残りは必要に応じて投入すればよい。たとえば、事業が成長して追加資金が要るときに、融資や増資で残りを入れれば問題ない。明確な期限も定められていないため、事業計画に合わせて柔軟に資金手当てができる。
ギマナくん: 最初から全部用意しなくていいのは、中小企業には助かるね!でも25億ルピアって大金だけど、それって会社の銀行口座に入れたら自由に引き出したり、使っちゃっていいの?
ゼンさん: 基本的に、インドネシア国内で使う分には自由に活用して構わない。従来は払込後すぐに資本金を引き出して使うこともできたが、新規則では払込資本金を最低12か月は口座から動かさない決まりがある。ただし、過度に心配する必要はない。これは資本金が実在し事業に充てられることを担保する措置で、設備購入や建物建設、運転資金など事業目的なら例外として引き出しが認められる。つまり、会社運営に必要なら国内で問題なく使えるということだ。
ギマナくん: なるほど。「資本金を形だけでなく実際に事業に使うならOK」ということだね。インドネシアもちゃんと実態がある投資かどうかを気にしてるんだ。
ゼンさん: そのとおりだ。もう一つの重要な緩和ポイントは手続きの簡素化だ。以前は払込資本金の証明として銀行残高証明や監査人の確認書が求められ、手間が大きかった。現在は「自己宣誓書(Pernyataan Mandiri)」方式となり、代表者が「必要な資本金を投入し規則どおり保管している」と宣誓すれば足りる。行政手続の信頼性を高めつつ、実務負担を軽くしたと言える。
ギマナくん: 最後にもう一つだけ。将来的な株式の現地譲渡義務って何?現地譲渡ってことは、将来インドネシア人にも株を渡さないといけないの?
ゼンさん: 君は抜け目ないな!インドネシアには古くからの原則として、100%外資の会社であっても将来的に一部株式をインドネシア人(または法人)へ譲渡する決まりがある。これは「ダイベストメント義務(外資15年ルール)」とも呼ばれ、2007年投資法以前から運用されてきた。具体的な割合は法律で明示されていないが、実務上は出資額で最低1000万ルピア(約9万円)以上を譲渡すれば足りるとの解釈が一般的だ。要するに、名目的であってもインドネシア人株主を1人入れるという考え方だ。
ギマナくん: 1000万ルピアって金額的に少ないし、割合もすごく小さいけど、形式的にも地元の人をゼロにはしないってことなんだね。 インドネシアらしい配慮だなあ。
ゼンさん: 政府としては、外国企業にも「将来的にインドネシアと共に成長してほしい」というメッセージを示していると言える。
もっとも現在は2021年以降のルールにより、当初から外資100%での設立が認められている。したがって、直ちに地元株主を入れる必要はない。当面は25億ルピアの資本金で事業に専念して問題ない。
ギマナくん: そっかぁ…。2025年の改正でインドネシアが外国企業にとってだいぶ入りやすくなったのが分かったよ!業種の縛りが緩くなった2021年の流れもあって、今度はお金と手続き面のハードルが下がったんだね。
ゼンさん: そのとおりだ。インドネシア政府は中小規模の外資やスタートアップにも正規ルートで参入してほしいと考えている。そのため資本金要件を引き下げ、手続きを簡素化した。
これにより名義借りに頼らず堂々と進出できるため、インドネシア市場は一段と身近になる。無論、総投資100億ルピアという基準は残るので少額で何でもできるわけではないが、リスクを抑えた試験進出には十分現実的な水準になったと言える。インドネシア側にとっても、雇用創出という部分で社会課題になりつつある就職率の底上げというメリットもあるんだ。
ギマナくん: ゼンさん、ありがとう!これなら僕にも分かったよ。インドネシアってすごく厳しいイメージがあったけど、今はバランスを取りながらどんどんオープンになっているんだね。将来ぼくが会社を作るとしたら、インドネシア進出も夢じゃないかも!
ゼンさん: ああ、ぜひ挑戦するといい。インドネシアは「外資に開かれた新興大国」を目指して前進している。ギマナくんなら将来きっとインドネシアでも活躍できる。健闘を祈る!
まとめ(ポイントと注意点)
- 最低払込資本金の引き下げ:
2025年改正により、外国資本会社(PT PMA)の最低払込資本金額は100億ルピアから25億ルピアへ大幅緩和 。ただし土地・建物を除く総投資計画100億ルピア超という基準(1事業分野・1プロジェクト地点あたり)は維持 。不足分の資金投入時期に明確な期限はない。必要に応じて段階的に投資すればよい。 - 将来的な現地株式の譲渡義務(ダイベストメント):
外資100%で設立した会社も長期的には一部株式をインドネシア人株主に譲渡する義務がある(外資15年ルール)。譲渡割合は法律上明示されていないが、最低1000万ルピア相当(約9万円)以上の株式を譲渡すべきというのが実務上の解釈だ 。これは形式的にも地元資本がゼロではない状態を求める趣旨であり、当初から地元株主を入れる必要はないが将来的な留意点となる。 - 払込資本金の活用:
新規則の下、払込済みの最低資本金25億ルピアはインドネシア国内で自由に事業資金として活用可能。ただし払込後12ヶ月間は口座から移さない「留保」義務が課され、設備購入・建設費・運転資金に充当する場合は例外的に引き出し可とされている。証明手続きも自己宣誓書の提出で足りるため実務負担が軽減 。 - 背景と改正の意義:
2021年のネガティブリスト廃止(ポジティブリスト化)により外資参入可能な業種が大幅拡大したのに続き、2025年改正は資本要件の緩和と手続き迅速化によって参入ハードルを引き下げる転換点となった。これにより中小規模の外国企業やスタートアップでも合法的にインドネシア進出が現実的選択肢になり、名義借りの解消や投資環境の透明性向上が期待されている。今後は緩和された制度の下で、法令遵守と慎重な事業計画立案が重要である点は変わらないものの、インドネシアが掲げる「外資に開かれた新興大国」路線に沿って更なる制度整備が進むと見られる。個々の企業にとってもリスクを抑えた市場テストや段階的投資が可能となり、東南アジア戦略におけるインドネシアの魅力が一段と高まったと言えるだろう。
本コーナーの水先案内人はこんな人

日系企業向けサービスに特化した総合コンサルティング会社、PT Ihza Integrated Consulting (IIC) 代表。
法律家としての経験も豊富で、多くの日系企業の顧問弁護士を務める。インドネシアに4人しか存在しない、日尼公認通訳士の資格を保有するインドネシア人でもある。1986年インドネシア生まれ、茨城県つくば市育ち。
IICのWEBサイトはこちら:https://ihzaconsulting.com/jp/
