トヨタ、低価格HVで中国勢に対抗

2025-11-27 04:57

展示会で新型発表

 年末の大型自動車展示会「ガイキンド・ジャカルタ・オート・ウィーク(GJAW)2025」が21日から30日の日程でバンテン州で開催され、多くの自動車メーカーが電気自動車(EV)を前面に出した新型車を次々と披露している。トヨタ自動車は多目的車( MPV)「ヴェロズ」のハイブリッド(HV)モデルを低価格で発売すると発表し、勢いを増す中国勢に対抗する姿勢を見せた。

(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)
今回世界初公開となった、ハイブリッドモデルの「ヴェロッズ・ハイブリッド」。価格を抑えてガソリン車からの買い換え需要を取り込む

HVモデルを世界初披露

 21日の開会式では、インドネシア自動車工業会(ガイキンド)がプトゥ・ジュリ・アルディカ会長が「今回の展示面積は9万平方メートルと過去最大で初開催した22年の3倍だ」とGJAWの成長ぶりを誇った。このイベントは昨年同様年末に開催され、今回は80社以上の自動車関連ブランドが出展された。

 今回のイベントで一際人目を引いたのが、トヨタが世界で初めて公開した新型「ヴェロズ・ハイブリッド」だ。ヴェロズは家族向けの中型多目的乗用車( MPV)として21年にガソリン車モデルが販売を開始。今回発表されたモデルは、エンジンとモーターを組み合わせたフルハイブリッドシステムを搭載し、街乗りでは電動走行を多用できる設計となっている。

 従来と比べて燃費性能の向上や走行中の静けさの改善を打ち出し、「初めての電動車」に踏み出したい家庭層を狙う。事前予約を開始しており、価格は2億9900万ルピアから。価格面もガソリン車と大きな差がつかない水準に抑えた。

 トヨタは電気自動車(EV)のスポーツ用多目的車(SUV)「bZ4X」の現地生産モデルなども会場で前面に出した。幅広いラインナップで用途と予算に応じて段階的に電動車へ移行できるよう、顧客にアピールした。

中国勢もアピール

会場は展示された各社のEVラインナップを見ようと多くの来訪客で賑わった

 中国勢も存在感を発揮した。中国EV大手上汽通用五菱汽車(ウーリン)は新型MPV「Darion(ダリオン)」を前面に配置し、EVとプラグインハイブリッド(PHEV)の2仕様を用意した。ウーリンの発表によれば、ダリオンは今月5日の発売開始からすでに合計1500件の注文を獲得しており、会場ではその顧客への引き渡しセレモニーも行われた。

 同じく中国EV大手のBYDは約1575平方メートルの大型ブースを構え、6モデル・10台のEVを展示した。わずか2年弱の参入期間でEVシェアの半数を占めるまでに成長した同社は更なるシェア拡大に向けた意欲をたぎらせている。

自動車市場、低調続く

今月発売を開始したウーリンの MPV「ダリオン」。展示会では納車セレモニーも行われた
 自動車市場全体はここ1~2年で勢いを欠いている。ガイキンドの統計によれば、昨年の新車販売(卸売)は大台の100万台を大きく割り込み、約80万台にとどまった。今年に入ってからも回復は鈍く、1~10月の累計販売は前年同期をおおむね一割前後下回る水準にある。ローン金利の高止まりや生活費の上昇が、買い替えをためらわせているとみられる。

 直近の数字には変化の兆しも見える。最新の10月単月の販売台数は、今年に入って最も高い水準となり、前月からは大きく増加した。6カ月以上続いた低調な推移から一歩抜け出し、「底打ち感」がようやく意識され始めている段階である。ただし、前年同月には届いておらず、年間トータルで見れば依然としてマイナス圏内にある。現時点では戻り局面に入りつつあるが、本格的な回復とは言い切れないのが実情だ。

 こうした中でGJAWは、単なる展示会ではなく、年末商戦と金融キャンペーンを一体化した「売るための場」として機能している。メインスポンサーのプルマタ銀行は会場内にローン相談ブースを構え、特別金利や頭金優遇などの条件を提示する。来場者はその場で試乗し、見積もりを確認し、資金計画まで相談できる。車両と試乗、金融商品が一カ所でつながる販売スタイルをGJAWは定着させようとしている。