インドネシアニュース 低い補償水準、邦人に重荷ー民間保険の加入は不可欠
自動車保険普及が十分とは言えないインドネシアでは、在留邦人が交通事故に遭った場合、補償は海外旅行保険など民間保険に大きく依存する。加入していれば遺体の搬送費や遺族の渡航費、ホテル代などがカバーされるが、未加入の場合は遺族に大きな経済的負担が生じる。
もし在留邦人がインドネシア国内で交通事故に遭った場合、国営保険会社のジャサ・ラハルジャが事故被害者に一定の給付を行っているが、補償額は限定的だ。
例えば死亡事故は5000万ルピア(約50万円)、治療費は上限2000万ルピア(約20万円)、応急手当は100万ルピア(約1万円)、救急車費用は50万ルピア(約5000円)の支給額となる。
日本では自賠責保険の加入が義務づけられ、死亡事故の場合は最大3000万円まで補償される。葬儀費や逸失利益、慰謝料などがカバーされる対象となり、補償水準には大きな差がある。

■限界ある在外公館支援
邦人遺族にとってさらに厳しいのは、現地で十分な公的支援が受けられないことだ。
大使館など在外公館が行えるのは病院や警察への連絡の助言、弁護士や通訳の紹介、遺体の身元確認や火葬、死亡証明書、日本への移送手続きに関する助言、家族との連絡支援などに限られる。
訴訟や医療・国内移送に関する費用の負担、加害者との賠償交渉など、実務的な現地手続きについては関与できない。
このため、死亡事故などの重大事案では、遺族が現地制度の中で対応を迫られ、大きな精神的・経済的負担を抱えることになる。
■不十分な免許制度
さらに、免許制度の形骸化が賠償リスクを助長している。ある在留邦人は、事故を起こした相手が無免許だったために保険請求を拒否された。また別の邦人は「運送会社の運転手に免許の有無を確認したら、全員が無免許だった」と驚きを隠さない。
加えて、インドネシアでは免許取得の際にブローカーへ手数料を渡して不正取得するケースも多く、運転手の質が担保されていない実態がある。
企業の賠償責任を問うのも困難だ。ある日系企業幹部は「横転したアンコット(乗合バス)が社有車にぶつかった際、運転手は無免許かつ飲酒運転だったが、バス会社側は『運転手が勝手にしたこと』と少額の示談金しか出さず、泣き寝入りを強いられた」と話す。
雇用者の連帯責任を追及しにくい法運用の壁も、被害者救済を阻んでいる。