インドネシアニュース 社説 日イ新時代、対等なパートナーへ脱皮を
「今日のインドネシアは、20年あるいは25年前に皆様が知っていた国とはもはや同じではない」。3月30日に都内で開かれた「日・インドネシア ビジネスフォーラム」でプラボウォ大統領が発した言葉は日本の経済界に対し、かつての「援助する側と受ける側」という固定観念を捨て、対等なパートナーとして向き合う自信を鮮明にしたものといえる。日本にはその「挑戦」を受け入れ、新たな時代の二国間関係を築いていけるかが試されている。
■期待が表れる投資額
2014年から10年間に及んだジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前政権下で、中国による対インドネシア投資は急増。日本が投資額で後れを取り、インドネシアで存在感が低下したことは否定できない。
こうした流れの中で、今回合意した総額226億ドル(約3兆6000億円)規模の経済協力は、日本の「巻き返し」に向けた強い意志の表れだ。金額の規模としては25年に日本がインドネシアに対し行った直接投資総額の約7倍。インドネシアと中国の首脳会談に伴うビジネスフォーラムで決定された、23年(126億ドル)、24年(100億ドル)の2回分の合計と同額で異例ともいえる。
協力内容もエネルギー分野にとどまらず、金融包摂やAI(人工知能)を使った人材育成など多岐にわたり、包括的な関係構築を志向する今回の姿勢は評価されるべきだ。
■関係見直す視線を
一方で、日本側には冷静な視点も欠かせない。プラボウォ大統領がフォーラムで強調した電気自動車(EV)や電動二輪の普及策は、日本の基幹産業である自動車各社にとって看過できない「主戦場」の変容を意味する。
インドネシアでは再生可能エネルギー導入と電動化が国策として一体的に推進されている。大統領も日系メーカーがガソリン車とハイブリット車を主力にしていると知った上で発言した。同国の市場で中国製EVが存在感を強く示す中、現状8割という圧倒的なシェアを誇る日系各社といえども、もはや安穏とはしていられない。
■冷静こそが真の関係に
新時代の日イ関係を築く上で肝要なのは、情緒を排した「サバサバしたリアリズム」ではないか。
15年のジャカルタ―バンドン間の高速鉄道計画で中国案が採用された際の教訓は重い。日本は、政権交代や政治判断によって国家プロジェクトの方向性が急転回するリスクを身をもって学んだはずだ。
当時は「日本こそが最良のパートナー」という自負が強かっただけに、国内では裏切られたという感情が広がり、対イ感情の悪化を招いた。だが、現在のインドネシアには中韓のみならず、ベトナムなど強力な競合相手がひしめく。こうした多極化の中で、日本は「一番のパートナー」という独りよがりな思い込みは捨てるべきだ。
これからは日イ双方が互いを「有力な選択肢の一つ」と冷静に位置づけることが重要だ。日本特有の「恩」や「感謝」といった情緒的期待を前提とせず、組むことの利害、そして契約とルールに基づくドライなアプローチに徹すること。それこそが、対等で強い、新しい時代の両国関係の基本条件となる。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)