インタビュー 明珍充臨時代理大使 新年インタビュー — 大統領訪日、「早期実現に尽力」日系企業の活動も支援
明珍充・在インドネシア日本国臨時代理大使が就任してから3カ月が経過した。特命全権大使が着任する留守を預かる立場だが、激しく揺れ動く国際情勢の中で「臨時だからと言って立ち止まっていいはずがない」と気持ちを引き締める。2026年の始まりに合わせ、今年の抱負やインドネシア政治経済の予測などを聞いた。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

——今年の抱負は。
◆予想外の人事で臨時代理大使に就任することになったが、国際情勢が激しく動いている今、臨時の立場だからといって立ち止まっていいはずがない。特に日本とインドネシアの関係はこれまで積み上げてきたものをベースにしながら、より一層深めていきたい。
また、インドネシアの在留邦人のお仕事や生活が円滑かつ安全に進められるように、大使館として引き続き支援をさせていただきたい。
——インドネシアが初めてのアジアでの赴任国だ。
◆これまで海外は米国のワシントンやスイスのジュネーブ、オランダのハーグという比較的静かな都市だった。それに比べるとジャカルタはにぎやかで非常にダイナミックな印象を受ける。この3カ月はジャカルタの中心部をほとんど離れることはできなかったので、地方も回って各地の文化や歴史に触れたい。
日本食は質量ともこれまでのヨーロッパの赴任地に比べて圧倒的にレベルが高い。これはインドネシアと日本の食の親和性が高い証拠だと思う。違和感なく楽しめる所で親近感がわく。
——就任3カ月で印象的な仕事は。
◆在インドネシア日本大使館が行う「草の根・人間の安全保障無償資金協力」で、南パプア州の病院の機材の整備、それから西ヌサ・トゥンガラ州西ロンボク県の中学校校舎の整備の2件に私自身の署名をさせていただいた。インドネシアの地方へのきめ細かい支援ができたらうれしい。
——プラボウォ政権の外交方針、特に対日方針をどう見るか。
◆まず、インドネシアの伝統的な全方位外交のスタイルは、スカルノ初代大統領から現在のプラボウォ大統領までずっと続いている。有名なモットーは「千の友は少なすぎるが、一人の敵は多すぎる」で、すべての国と良好な関係を築いていこうとする。
それを踏まえて、プラボウォ政権の特徴は、大統領自身が積極的に外交を展開していることだ。特に米中、ロシアのような大国を重視している印象を受ける。政権発足直後、中国に2回、ロシアも2回訪問した。これだけ聞くと「中露側に寄ってる」と思われるかもしれないが、オーストラリアも昨年11月に訪問して安全保障関係を強化しており、話はそんな単純ではない。
日本については、プラボウォ氏は「建国以来の長年の友人」と話しており、昨年1月には石破茂前首相がインドネシアを訪問して首脳会談を行った。ここで安全保障や経済、政権肝入りの無料給食プログラム(MBG)などについても話し合った。
——プラボウォ大統領の訪日・首脳会談はいつになりそうか。
◆日イ両政府ともに調整を進めているが、具体的なところはまだ未定だ。
——新しい駐日本大使のカルティニ氏の印象と、連携の方向性は。
◆カルティニ・シャフリル・パンジャイタン新大使とは、これまで2回お会いしている。日本には地方を含めて何度も公私問わず訪問されていて造詣が深い。幅広い事柄についてじっくりかみ合って話ができた。今でも(メッセージアプリの)ワッツアップで直接連絡を取り合っている。
お互い、目下の一番大きな目標は、先ほども申し上げたプラボウォ大統領の訪日。実現させるためにしっかり意思疎通をしていきたい。重要なことは日本人の見方を押しつけるのではなくて、インドネシア人が「腹落ちする」言い方を常に考えていくことだと思う。
——国内政治・経済の見通しは。
◆まず政治について。1月5日のコンパス紙の世論調査では、過半数が「今年、国内政治は安定すると予想する」という回答で、基本的には安定すると見ている。
経済は、国内の実質成長率はコロナ禍以降、前年同期比5%前後で推移していて、安定的に成長している。ただ、中間層がなかなか拡大せず、内需を喚起する上での足かせになってるという指摘もあるのでここが懸念点だ。
注目しているのは、昨年プラボウォ政権が立ち上げた政府系投資ファンドのダナンタラ。今年、投資活動を拡大していくと見られる。その中でも日本企業が手を挙げているものもあり、今後、投資と成長のエンジンとして、うまく役割を担っていけるかどうかに関心がある。
——中国の影響力が増している。
◆これはインドネシアだけではなく世界中で言える現象だ。他方で、インドネシアでは日本企業はしっかり根を下ろしている。例えば自動車産業についても、産業がものすごく広がって、部品から何からサプライチェーンができ上がっている。最近はBYDなど、中国製電気自動車(EV)がシェアを取っているが、これは完成品の輸入や、せいぜい現地での組み立て。EVはそもそも部品が少ないので、国内での広がりは相当限定的だと思う。
日系の自動車関係の企業は伝統、実績と信頼があるが、あぐらをかいてもいいということではないので、引き続き日本企業の方が仕事を円滑にできるように、我々としても積極的にお手伝いをしていきたい。
——次の特命全権大使の赴任見通しは。
◆確たることを言える状況にはない。
——大使不在で業務上の負担はあるか。
◆大使と本来の次席行使の両方の役職を担わないといけないので、ジャカルタを動くことが本当に難しい。そのため、私自身も一日も早く次の大使に来てほしい。
——ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)との関係は。
◆今でも関係はできていて、私も理事長とは直接やり取りしている。いろんなイベントにも呼ばれるので、なるべく私も顔を出すようにしている。
——中国は政府と商工会議所が連携してインドネシアにも数多く使節団を送り込んできている。
◆中国とは政治体制そのものが違うので、日本の場合、大使館が何もかも仕切るというわけにはいかない。日本は自由経済の国なので民間でやれるところは民間主体でやっていただく。とはいえ、企業活動で制度的な壁にぶつかるなどした場合、私たちもインドネシアの関係省庁とやり取りするなど、支援は継続的にしていく。
——趣味は。
◆ゴルフはインドネシアでクラブをそろえ始めたばかりで初心者だ。公務優先でなかなか練習する時間が取れず、まだまだ趣味と言えるようなレベルではない。
それとは別に学生時代にやっていた社交ダンスを再開した。インストラクターのレッスンを受けている。