インドネシアニュース WILLER、BSDシティで渋滞緩和狙うー住民向けオンデマンド交通実証
高速バス大手のWILLER(ウィラー)は、バンテン州の新興開発都市「BSDシティ」で、オンデマンド交通(定額乗合型)サービス「mobi(モビ)」の実証事業を開始した。市内のイオンモールと連携し、生活圏内の移動をアプリ予約で最適化することで渋滞緩和につなげる狙い。実証を基に、国内の他地域にも展開したい考えだ。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

■145カ所の仮想バス停
実証実験は1月28日〜2月26日で、運行時間は午前7時〜午後10時まで。車両は2〜3台を投入し、料金は無料とした。専用アプリで予約を入れ、BSD内にある145カ所の「仮想バス停」で乗り降りする仕組みだ。利用状況や道路状況に応じて人工知能(AI)が最適なルートを算出し、待ち時間の短縮を図る。
■地域住民向けでは初
同社はこれまでバリ島で観光客向けにアプリシステムを提供した実績があるが、インドネシアで地域住民向けに展開するのは初めて。今回の実証では、インドネシア現地での需要の有無や、仮想バス停の最適な配置位置などを検証する。
インドネシアでは都市部の慢性的な渋滞は社会課題となっており、特にジャカルタ首都圏(ジャボデタベック)など国内の交通渋滞による経済損失は年間71兆4000億ルピアに上るというデータもある。同社は本事業を通じて、地域住民の行動変容を促し、渋滞緩和や二酸化炭素(CO2)排出量の削減を目指す。
■ASEANで積極展開

同社は東南アジア諸国連合(ASEAN)を軸に海外展開を進めてきた。シンガポールでは都心部でオンデマンド型サービスを進めており、アプリで呼び出すと平均10〜15分で車両が到着する。半径約2キロ圏内の移動を補完する「ラストマイル移動」を担うサービスとして人気を博しているという。
マレーシアでは同社シンガポール子会社が現地交通大手と提携し、23年3月にクアラルンプール首都圏で「mobi」サービスを既に開始している。
ベトナムでは、合弁会社を設立し「mobi」と都市間移動サービス「trip」のアプリ及びウェブサービスのシステム開発体制を構築。ハノイでは、日本政府の支援枠組み「Smart JAMP」による無料トライアルも実施している。
■イ国内展開を検討
今回のBSDシティでの実証実験は、同社が掲げる「郊外へ横展開できる持続可能なビジネスモデル」の試金石となる。生活のハブとなる商業施設を中心に住民の移動同線を設計し、オンデマンド交通を公共交通の補完として定着させられるかが焦点だ。
同社はジャカルタ近郊の交通事情や普及の可能性について、社内外で検討を重ねており、実証結果を踏まえてインドネシア国内での本格展開を判断する方針だ。
スマホで配車、快適ミニバスールポ ウィラー実証、街の回遊性向上に期待
ジャカルタ郊外の新興都市「BSDシティ」で始まったオンデマンド交通の実証実験。ウィラーとイオンモールなどが連携し、1月28日から約1カ月間にわたり、新たな移動サービス「mobi(モビ)」の可能性を探っている。その現場を訪れ、実際に車両に乗り込んだ。
■直感的なアプリ操作

利用はスマートフォンの専用アプリ「mobi Community Mobility」から始まる。アプリをダウンロードし、メールアドレスを登録。届いた認証メールのリンクを開き、氏名やパスワードを入力するだけで利用を開始できる。日本語表示にも対応しており、操作は直感的だ。海外の配車アプリにありがちな煩雑な手続きはなく、初回設定は驚くほどスムーズだった。=写真①
エリア選択で「Jakarta BSD City」を指定すると、地図上に現在地と配車可能エリアが表示される。イオンモールBSDシティを中心に、エリア内に多数の仮想バス停が点在する。地図上には車両の現在位置も表示され、乗車地と降車地をタップして指定する仕組みだ。人数を入力し「mobiを呼ぶ」を押すと、車両とのマッチングが始まる。
予約後、ほどなくして配車が確定。車両番号やドライバーとの連絡方法が画面に表示された。待つこと数分、白と緑のミニバスが静かに到着した。
■従来イメージ覆す快適性

車内に足を踏み入れて驚いた。ジャカルタ首都圏で一般的に運行される小型乗合バス「アンコット」とは一線を画す仕様で、ゆったりとしたリクライニングシートと冷房が完備されている。むしろ都市間輸送を担うミニバス「トラベル」に近い快適さだ。清潔感のある車内でシートに身を預けると、BSDの整然とした街並みがゆっくりと流れていく。=②

運転は穏やかで、ドライバーの応対も丁寧。外国人でも不安なく利用できると感じた。目的地に近づくと声をかけてくれ、笑顔で送り出してくれる。配車から降車までの一連の流れは想像以上にスムーズで、従来の公共交通のイメージを覆す体験だった。=③
都市部で人々を悩ます深刻な交通渋滞。郊外の振興住宅地では、自家用車が普及しつつあるが、全員が常時使えるとは限らない。日中に車を使えない世帯にとって、アプリ一つで呼び出せるミニバスは心強い選択肢となるだろう。
イオンモールを核とするBSDシティで、買い物や通勤・通学などで誰もが気軽に使える移動手段が整えば、街全体の回遊性は確実に高まるはずだ。デジタル技術を活用した「呼べる公共交通」が、渋滞緩和と生活の質向上の両立を実現できるのか。短時間の乗車ながら、その可能性を確かに感じた。