インドネシアニュース 日本の投資「インフラから消費財」へーゼンジアIIC代表が解説
日系企業に特化した総合コンサルタント会社、イーザ・インテグレーテッド・コンサルティング(IIC)のゼンジア・シアニカ・イーザ代表が民放テレビ・ガルーダTVの番組「ザ・ブリリアント」に出演し、日本によるインドネシア経済への支援と両国間のビジネス関係について解説した。同氏は両国の関係について「非常に戦略的」と述べ、政府間協力に加え、民間投資や人材交流の分野でも連携が広がっているとの見方を示した。

■民間投資へシフトへ
ゼンジア氏は番組内で、両国の経済関係の特徴について「政府間協力(GtoG)を土台に企業間取引(BtoB)や消費者向けビジネス(BtoC)へと拡大している」と説明した。
GtoGでは、日本が西ジャワ州スバン県のパティンバン港やMRT(都市高速鉄道)など、日本が関与してきた大型案件に触れ、インフラ分野を中心に日本の支援がインドネシア経済の基盤づくりに寄与してきたと解説した。
一方で、近年は日本企業による消費財分野での進出意欲について指摘した。特に食品やスナック、衣料、外食など、日本ブランドのインドネシア市場への関心は高く、既にシンガポールなど周辺国に進出しているものの、インドネシアには未進出のブランドもまだ多いという。また、同氏は大手ブランドに加え、日本の地方発の中小ブランドにも進出の余地があるとの見方を示した。
背景にあるのは、日本の国内市場の縮小だ。ゼンジア氏は、日本では人口減少の影響で、国内だけで事業を拡大することが難しくなっていると説明。これに対し、人口規模が大きいインドネシアは消費市場としての魅力が高いと強調した。
■日本文化に高い関心
議論は日本の文化コンテンツにも及んだ。ゼンジア氏は、インドネシアで認知度の高い日本コンテンツとして、「JKT48」や「ドラえもん」「ポケットモンスター」などを挙げた。特にポケモンカードは近年、コレクター市場で人気が高まっているという。
ただし、日本のコンテンツ産業は近年、韓国や中国との競争にも直面しているとも指摘。韓国の「Kポップ」や中国ドラマの存在感が増す中、日本側もインドネシア市場での影響力維持を模索しているという。ゼンジア氏は「韓国では国家的な支援を背景にコンテンツ輸出が進められてきた一方、日本は民間主導の色合いが強い」と述べ、両国の戦略の違いを分析した。
■市場理解が障壁崩す
日本企業がインドネシア進出で直面する課題について、ゼンジア氏は「市場の読み違え」を挙げた。日本企業は相手を信じ、善意を前提に事業を進める傾向がある一方、現地市場の多様性を十分に理解しないまま進出すると、想定とのズレが生じやすいという。
同氏は「インドネシアは民族、宗教、地域性が非常に多様であり、日本の感覚だけで商品やサービスを展開することは難しい」と指摘。食品や外食産業では(イスラム教の戒律に沿った)ハラル対応が不可欠であり、事前の許認可や商品認証の取得、緻密な消費者調査などが欠かせないと説明した。
また、投資判断においては法務リスクと市場規模の精査が重要になるとした。会社を設立しただけでは事業は始められず、営業許可や各種認証が整って初めて本格的な運営が可能になる。事前の市場調査や試験販売を通じ、自社の商品が本当に現地で受け入れられるかを見極める視点が必要だと述べた。
■「緻密さ」時には問題に
ゼンジア氏は、日本企業の商習慣の特徴を「非常に細かい」と表現した。ただし、その細かさは事業開始前の確認作業に集中しているという。日本企業は、十分な情報を得ないまま事業を始め、途中で失敗することを嫌うため、初期段階で詳細なデータを求める傾向が強い。
例として、農業案件であれば土地の広さだけでなく、土壌成分からミネラル、酸性度、塩分濃度まで確認するといった組織としての特有の姿勢を挙げた。このためゼンジア氏は、日本企業に提案する側も、想定される質問に答えられるだけの資料や根拠を準備しておく必要があると指摘した。
意思決定のプロセスでは、日本企業はコンセンサス(合意形成)を重視する。現場、中間管理職、上級管理職、経営層の各段階で合意を形成しながら進むため、決定には時間がかかる。一方で、会議前にメールや日常的なやり取りで方向性を共有しておく文化があり、会議は最終確認の場になることが多いと、日本企業に見られる特徴を解説した。
■人材「今後のカギに」
番組では人材交流が両国関係を支える重要な基盤だと指摘された。日本では人口減少と人手不足を背景に、インドネシアほか外国人労働者への需要が高まっている。ゼンジア氏は、かつて外国人が日本で就労するには大学卒業資格を求められるケースが多かったが、現在は高校や職業高校の卒業者にも広く門戸が開かれていると紹介した。
一方で、日本で就労する際の日本語能力の重要性も指摘。出国前の日本語試験や技能研修、就労後の評価・追加試験の存在も解説した。例えば、IT分野でも、コーディング能力があって日本語ができない人材より、日本語で意思疎通できる人材を優先するケースがあるという。その理由として「日本企業では業務がチーム単位で進められるため、コミュニケーション不足が現場の重大なリスクに直結するからだ」と分析した。
■まずは相互理解を
ゼンジア氏は、今後両国の経済関係をさらに強化するには、双方の文化や商習慣への相互理解が不可欠だと総括した。日本側はインドネシアを一つの画一的な市場として捉えがちだが、実際にはジャワやスンダ、スマトラなど多様な民族・地域性があり、消費者の好みや働き方も一様ではない。
一方、日本側にも独自の労働文化や意思決定プロセスがある。勤務時間中は形式や手順を重んじる一方、業務後の会食や懇親の場では本音で語り合う文化もある。同氏は、こうした違いを認識した上で、企業間の交渉や人材交流を進めることが重要になると結んだ。