インドネシアニュース 「日本式算数」アプリ、国内で本格展開ーデータで学力可視化、格差縮小へ一歩

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 日本式の算数教育をベースとした学習アプリ「Mathmaji(マスマジ)」を展開するMathmaji(東京都渋谷区)がこのほど、インドネシアの初等教育市場で本格的な事業展開に乗り出した。単なる計算ドリルではなく「自ら考えて答えを導く」問題解決のカリキュラムが特徴だ。需要が高まる「STEM(科学・技術・工学・数学)人材」の育成や教育格差の是正への貢献を目指す。

ゲームとは違う教育効果に焦点をあてた「マスマジ」のアプリ画面=マスマジ提供

■高い日本の算数レベル

 同社の廣瀬康令社長は、日本の算数教育について「経済開発協力機構(OECD)加盟国の中でも長年トップの水準を維持している」と説明する。背景には日本独自の体系的なカリキュラム設計と、具体物と抽象概念を往復しながら思考力を鍛える教育手法があるという。

 廣瀬氏は「日本の算数教育には計算練習以上に、問題解決能力を養うことに強みがある」と述べ、米国で広く普及する「シンガポール式数学」についても「元をたどれば日本の学習指導要領を参考に発展したものだ」と紹介した。

 また、日本の教育に対して国内では「詰め込み型」など否定的な論調もある一方、「海外で働く日本人の基礎能力の高さは依然として際立っている」とし、「抽象概念を具体的な行動に落とし込む力こそ、日本教育の強みだ」と強調した。

■デジタル化で劇的改善

「マスマジ」は国内の教育展示会でも積極的に事例を紹介している=同社提供

 廣瀬氏は米サンフランシスコやシカゴの教育委員会と連携し、学力が低迷する学校の改善プロジェクトにも参画。3年間の取り組みの中で、教材を従来の紙の教科書から教育アプリに移行させ、成績下位校をトップレベルへ押し上げた実績を持つ。

 転機となったのは新型コロナウイルスの世界的な感染拡大だった。ロックダウンの最中で米国内のビジネスが一時的に停滞する中、世界38カ国から「日本式算数のデジタル版はないか」との問い合わせが寄せられたという。これを受け、日本へ拠点を移してデジタル教育プラットフォームを提供するマスマジを創業した。

 同社が現在展開中の最新版アプリは、日本の学習指導要領を基盤に、米国の全米共通論理基準(コモンコア)やシンガポールの数学シラバス(学習指導要領)にも準拠。算数を学びながら英語力も身につけられる設計となっている。

■教育熱徐々に形成

 廣瀬氏がインドネシアに着目したきっかけは、外資系投資銀行に勤務していた時代にさかのぼる。業務で国内各地に足を運ぶ中で「貧困地域でもスマートフォンが普及し、情報アクセスへの意欲が極めて高い」と実感した。

 インドネシアでは他の国に比べ数学教育が遅れていることに加え、親の経済力に伴う教育格差が大きい。このことから「スマホ1台あれば、高度な教育を届けられる可能性がある」と発想し、現在の事業構想に結びついた。

 インドネシア市場でのテストマーケティングでは米国の10倍以上の好反応を得られた。

 理由として挙げられるのは、国内で進むSTEM教育への重視や英語教育強化の流れがある。

 現在はインドネシア国内の複数の教育機関と連携し、インドネシア語版を共同開発中だ。現地の学生によるデジタルマーケティングプロジェクトも始動しており、教育と実務を結びつける試みとしても注目されている。

■ゲームと違う教育効果

教育アプリ「マスマジ」のロゴ=同社提供

 同社のアプリは、最近主流となっている「過度なゲーム化」とは一線を画す。廣瀬氏は「アプリは本物のゲームには勝てない」と語り、あくまで教材としての品質を重視する姿勢を貫いている。

 一方で、集中力の短い子どもの特徴に配慮し、短時間でテンポよく学習できるようユーザーインターフェース(UI)の設計を工夫。米国で行った実証実験では学習を適切に継続した場合、多くの子どもが高得点を獲得した。

 また、保護者や教員向けの学習管理システム(LMS)もアプリに盛り込んだ。学習の進み具合や理解度を可視化することで、家庭や学校でのフォローアップを実現。インドネシアでの利用料金は月額約7万ルピアに設定されている。

■大学入試も視野に

 小学生向けに加え、今後は中高生向けカリキュラムやインドネシアの国立大学入試「SNBT」対策講座も展開する予定だ。インドネシアでは大学進学率の上昇に伴い、国立大進学への関心が高まっている。このため同社は将来的に学習データを分析し、米国の「SAT」など国際基準と比較して学力を可視化する指標「マスマジ・グローバル・インデックス」や実店舗「マスマジ・スタジオ」(いずれも仮称)の設立も計画している。

 さらに、低所得層への教育アクセス拡大も視野に入れており、「スマホ1台で教育格差を縮めたい」とする廣瀬氏の構想は教育アプリビジネスを超えた、東南アジア全体を見据える教育プラットフォームへと広がりつつある。

■マネジメントにも応用

 同社は現地に進出する日系企業との連携も視野に入れる。廣瀬氏は「製造業やサービス業を含め、現地人材に求められる能力は高度化している。現場管理やマネジメント層の育成には、論理的思考力や問題解決能力が不可欠だ」と指摘。単なる受験対策にとどまらず、企業研修や教育支援活動への応用を進める方針だ。