インドネシアニュース インドネシアのライブコマースに本腰ータイムチケット、進出日系企業の宣伝支援も

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 日本でTikTok(ティックトック)LIVE向けライブ配信者(ライバー)プロダクション事業を展開するタイムチケット(東京都港区)が、インドネシアでの事業拡大を本格化させている。4月には、音楽系TikTokクリエイターとして国内で高い知名度を持つCaramel(Cece Caramel)さんを現地公式アンバサダーに起用した。急成長するライブ配信・ライブコマース市場を見据え、同社は3年以内にインドネシア国内最大級のライバープロダクションへの成長を目指す。

TikTokクリエイターとして高い人気を誇るCaramelさん=タイムチケットのサイトより

■会社設立わずかで受賞

 同社が運営する「タイムチケットプロダクション」は、TikTok LIVE上で活動するライブ配信者の育成やマネジメントを手掛ける事業者だ。ライブ配信に加え、ショート動画制作、ライブコマース支援、IP(知的財産)マネジメントなども手がける。

 設立から約2年半の新興企業ながら、日本国内ではTikTokの「優良エージェンシー年間大賞」を受賞した。同社によると、約2500社のエージェンシーの中で大手事業者として唯一選出されたという。

■ライブコマースの先進国

 同社がインドネシア市場を重視する背景には、同国の独特のデジタル消費文化がある。根本勇矢最高執行責任者(COO)は「日本ではライブ配信の後にライブコマースが普及したが、インドネシアでは先にライブコマースが強く浸透している」と分析する。

 インドネシアでは最近、TikTokで商品紹介を視聴しながら画面越しに直接購入する消費行動が急速に拡大。従来はネットコマース(EC)大手の「Shopee(ショッピー)」や「Tokopedia(トコペディア)」などのアプリで商品を検索して購入するスタイルが主流だった。しかし、近年はライブ配信中に紹介された商品を、アプリを切り替えることなくその場で購入するケースが増えているという。

 また同社は、市場規模だけでなく、エージェンシーに所属していないクリエイター層が依然として厚い点にも注目している。日本ではライブ配信者のエージェンシー所属率が上昇する一方、インドネシアでは個人で活動するクリエイターがなお多いとみており、成長余地の大きい「未開拓市場」として期待を寄せている。

■脱「投げ銭競争」

 今回アンバサダーに起用されたCaramelさんは、TikTokライブの世界音楽大会「Gimme The Mic2024」で準優勝した実力派クリエイターだ。根本氏は「単なるTikTokのプロというより、ライブ配信のプロ」と評価する。

 現在のTikTokライブでは、配信者同士が視聴者からの「ギフト(投げ銭)」の獲得数を画面上で競い合う「バトル機能」が人気を集めている。一方で同社は、配信者が過度な投げ銭競争に依存し続けるスタイルには限界があると指摘。根本氏は「他アプリで長年生き残ってきた実力派は、雑談や細やかなコミュニケーションを通じてファンと深い信頼関係を築く力がある。Caramelさんはその代表例だ」と語る。

 また、ライブ配信の本質について、完成されたパフォーマンスの提供ではなく「配信者の成長過程をファンが共有すること」にあると分析。視聴者は単に歌やトークを消費するだけでなく、配信者の日常の努力や試行錯誤を、いわば「伴走」する感覚で応援していると説明した。

■ファンが経済動かす

タイムチケットは日本でさまざまなライブクリエイターを抱える=同

 こうしたライブ配信市場の急拡大に伴い、インドネシアでもお気に入りのクリエイターを熱狂的に応援する「推し活」を軸とした、新たな消費行動が顕在化しつつある。

 例えば、配信者が動画内で訪れた飲食店にファンが殺到する現象や、配信中に紹介された服や化粧品が即座に完売するケースが増加している。根本氏は「手の届かない完成された芸能人とは異なり、日々の生活や感情を共有しているライバーだからこそ、ファンはより強い共感と購買意欲を持つ」と説明する。

 同社は今後、ライブ配信事業を核に、IPビジネスや関連グッズの販売、ライブコマースをかけ合わせた複合型の事業展開を進める方針だ。既にインドネシア国内では現地の有力コンテンツIPとの具体的な連携構想も始動しているという。

■日系企業の新たな武器に

 タイムチケットは、インドネシアに進出している、あるいは今後進出を狙う日系企業との協業にも強い意欲を示す。

 特に一般消費者向け事業(BtoC)を展開する企業に対し、「従来の広告では届きにくかった、現地の若年層との接点を構築できる」として、TikTokライブを活用した販促・マーケティング支援を視野に入れる。

 一方で、ライブ配信は従来型の広告メディアとは全く異なる性質を持つことも強調した。根本氏は「企業側が演出や台本を細かく指定し過ぎると、視聴者は『やらされている感』を敏感に察知して離脱してしまう。ライブ配信では、クリエイター自身が楽しんで紹介しているかどうかが重要だ」と述べた。

 日本企業にとって、インドネシアの熱狂的なライブ配信文化は未だ未知の領域かもしれない。しかし、SNSと「推し活」が融合して生まれた新たな消費経済圏は、既に若年層市場のトレンドを左右する巨大な勢力となりつつある。