インドネシアニュース 畜産業を「清潔な水」で救えーパナソニックの浄化装置、実験で効果確認

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 パナソニック・ゴーベル・インドネシアは、井戸水などに含まれる病原菌を除去する浄水システム「WPS」の販売を拡大する。IPB大学(旧ボゴール農業大学)と養鶏場や酪農場で実証実験を行い、食用鶏の死亡率低下や採卵率の改善、乳房炎の指標低下などを確認した。今後3年間でインドネシア全国の畜産農家に約1000台を販売することを目指す。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

パナソニック・ゴーベル・インドネシア製の浄水システム「WPS」は井戸水などに含まれる病原菌を除去できる=同社提供

■水道未整備のまま

 WPSは薬剤と砂や活性炭などのろ材を組み合わせ、水に含まれる細菌を殺菌し、同時に鉄分やにごり、臭い成分を除去する。浄水場の機能を小型機器に組み替えた商品で、専門知識がない利用者でも固形の薬剤を容易に補充できる構造が強みだ。

 パナソニック・ゴーベル・インドネシアでテクニカルアドバイザーを務める藤田浩史氏は「インドネシアでは水インフラの整備が人口増加や都市開発に追いついていない」と指摘。上水道の普及率は約31%にとどまり、残る約69%では井戸水などが使われているという。

 一方、下水道の普及率は1~2%、またはそれ以下とされ、生活排水やし尿がそのまま河川や地下に流れ込んでいる状態だ。「井戸水は基本的に管理されていない水。地域や場所によって何が含まれているかわからず、水質に大きなばらつきがある」(藤田氏)という。

 大学との共同調査などでは、調査した水の半数以上で大腸菌が検出されるケースもあった。透明に見える水でも大腸菌などが含まれている恐れもあり、「本当に深刻なのは目に見えない細菌だ」と藤田氏は強調する。

■水は生産量にも直結

卵に比べ鶏肉の生産量の伸びが鈍い背景には、飼育の際に使われる水が原因で鶏が死ぬケースが存在するからだという=同

 こうした水は家庭以外に畜産現場でも使われている。井戸水や川の水を未処理のまま家畜に飲ませたり、家畜や設備の洗浄に使う農場が少なくない。藤田氏は「畜産の生産性を左右する重要な要素は『餌・水・空気』の三つといわれる。水の問題に気づいていても農家が簡単に導入できる解決策はこれまでなく、手つかずのままになっていた」と話す。

 病原菌を含む水を家畜に与えた場合、健康や食欲に悪影響を及ぼし、死亡率や生産性にも影響する。さらに菌やウイルスに感染した家畜の排せつ物が再び地中や水に戻ることで感染が循環する可能性もある。良い飼料やワクチンを使用しても水が汚れていれば家畜が病気になり、鶏肉や卵、牛乳の国内供給に打撃を与えかねない。

■実験でプラス効果確認

インドネシアでは乳製品の消費量が増加する一方、原料である生乳の生産が伸びていない。これは不衛生な水により乳牛の健康状態が悪いためと考えられている=同

 食用鶏の実証実験では、井戸水をそのまま与えた鶏舎と、WPSで処理した水を与えた鶏舎を比較した。未処理水から検出された大腸菌群は処理後に除去され、鶏の死亡率は6・3%から3・67%に低下した。藤田氏は「農場では4000~6000羽単位で飼育するため、数ポイントの違いでも農家の収入に大きな差が出る」と説明。約2回の飼育サイクルで機器代を回収でき、年間では投資額を差し引いても約40万円相当の経済効果が出ると試算した。

 卵用鶏の実証実験では、WPSを使用することで採卵率が2・8ポイント改善し、死亡率も約3分の1に減った。未処理水からは大腸菌やエンテロバクター、サルモネラ菌などが検出されたが、処理後の水からは除去または大幅な減少が確認された。未処理水を与えたグループの卵から検出された黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌も、処理水を使ったグループからは検出されなかったという。

 一方、乳牛での調査も行われた。実験ではわき水を飲用や洗浄に使った場合とWPS処理後の水を比較。乳量自体に大きな差はなかったが、乳に含まれる脂肪分が上昇し、乳房炎を測る二つの指標も低下した。清潔な水によって牛の体調や食欲が改善したことに加え、乳房を清潔な水で洗ったことが乳房炎のリスク低下につながったとみられる。

 現在、藤田氏は各地で農家向けセミナーを開き、200件を超える農家から反応や問い合わせが寄せられている。ジャワ島の大型農家からも複数台を受注しており、今後は畜産設備会社などを販売・施工パートナーとして開拓したいとしている。