インドネシアニュース INPEX、28年越しで巨大LNG事業着工ー前政権の迷走経て、今年末の最終決定めざす
資源開発大手INPEXは16日、マルク州のアラフラ海マセラ鉱区の「アバディ液化天然ガス(LNG)事業」の初期インフラ工事に着工した。1998年の生産分与契約締結から28年を経て、道路や敷地、港湾などの敷地整備に入る。同社の上田隆之社長は起工式で「長年、ジャカルタでも東京でも語られてきたプロジェクトが始まる」と述べ、「日本とインド太平洋地域のエネルギー安全保障に貢献する極めて重要な事業だ」と意義を強調した。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

■大統領「早く成果を」
式典にオンラインで出席したプラボウォ大統領は「国民は30年待った。可能な限り短い期間で完成させなければならない」と強調し、停滞してきたこの事業を迅速に進行するよう関係者に呼びかけた。インドネシア政府は基本設計(FEED)の進展を踏まえ、最終投資決定(FID)を2026年末までに前倒しし、29~30年の生産開始を目指す方針だ。
同事業の総投資額は209億ドル(約3兆4000億円)を見込む。出資配分はINPEXが65%、国営石油プルタミナ子会社が20%、マレーシア国営石油ペトロナスが15%。プラボウォ氏は「投資してきた日本の友人、INPEXに敬意を表する」と述べ、3社の連携による早期の生産開始と成果の創出を訴えた。
■業者選定が課題
計画によると、同事業では年間最大950万トンのLNG、日量約1億5000万立方フィートの天然ガス、同3万5000バレルのコンデンセート(超軽質原油)を生産する。
政府は生産するガスの少なくとも60%を国内需要に充て、輸出を最大40%にとどめる方針を示している。供給先には国営電力PLN、国営ガスPGN、肥料会社などを想定している。
また、総投資額のうち約10億ドル(約1600億円)を二酸化炭素回収・貯留(CCS)に充てる。生産時に分離される二酸化炭素を地下に貯留する仕組みで、生産開始時からの稼働を目指す。環境負荷を抑えることで、アジア市場での競争力を維持する狙いがある。
INPEXは25年8月にFEEDを開始し、今年2月までに環境許可などを取得した。今回着工したのは道路や敷地、港湾、桟橋などが中心で、LNGプラントや海底生産設備など本体施設の着工には、設計・調達・建設を一括して担う設計・資材調達・建設(EPC)業者の決定が必要となる。
INPEXはEPCの入札手続きと並行して、LNGの販売先開拓や資金調達に向けた協議を進めている。
■ジョコウィ時代に停滞

事業の経済効果についてバフリル・エネルギー鉱物資源相は、国内総生産(GDP)への累計寄与を約1378億ドル、政府の直接収入を約378億ドルと試算した。建設期間の直接雇用は最大約1万2000人、操業開始後は約800~1000人を見込む。
事業の開始が四半世紀にわたり遅れた大きな要因は、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前大統領が16年、当初計画されていた洋上の浮体式LNG設備ではなく、地元への経済効果が大きい陸上設備への変更を求めたことだった。
19年に陸上案が承認されたものの、共同事業者だった英石油大手シェルが撤退を決め、計画は再び停滞。23年にプルタミナとペトロナスがシェルの持ち分を引き継ぎ、同年12月にはCCSを組み込んだ改定開発計画が承認された。
今回の着工により長年の停滞から大きな一歩を踏み出したものの、本体施設の建設にはEPC業者の選定などの関門が残る。政府が目標とするFIDの最終決定が年内に実現するかに注目が集まっている。