インドネシアニュース 「会員が本当に知りたい情報を」ーJJC新調査部会長・比良井氏に聞く

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 ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)の調査部会長に就任した比良井慎司・日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所長がこのほど、ジャカルタ日報のインタビューに応じた。比良井氏は「会員企業が今、本当に知りたいことに応える調査をし、インドネシア政府との対話につなげたい」と抱負を語った。国内市場の中長期的な成長への期待感を示す一方、政策運営の不透明さや輸入規制などが投資の障害になっているとの認識も示した。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

7月末に行われたアグス産業相(右奥)との会談では、中東情勢に関する日本企業のアンケート内容を説明した=JJC提供

 ——日系企業を取り巻く経営環境をどう捉えるか。

 ◆ジェトロが昨年夏に実施した投資環境調査では、インドネシアのメリットとして「市場規模・成長性」と回答した企業が74・6%に達した。国際協力銀行(JBIC)の有望国調査でも中期的に4位、長期的には3位を維持し、将来性への期待は依然として高い。

 一方、政策運営の不透明さや社会情勢を懸念する声もある。マクロ経済は5%前後の成長を維持しているが、さまざまな企業の参入で競争環境も激化しており、企業経営に直結する現場の課題は増加傾向にある。

 ——調査部会長として特に取り組みたいことは。

 ◆会員企業が今、本当に知りたいことを調べることだ。5月に実施した中東情勢に関する緊急調査では、短期間で318社から回答を得た。それだけ情報ニーズが大きかったといえる。

 調査を通じて初めて見えた事実もあった。現政権が進める国家のインターンシップ制度「マガン・ナショナル」に関するアンケートでは回答を寄せたのは50社程度だったが、実際に同制度を利用した企業からは優秀な学生を採用できたとの声があった。

 調査部会だけで完結せず、JJC全体と連携することも重要だ。調査結果を会員に還元し、対話を通じて新たな課題を吸い上げ、次の調査や提言につなげる。今後は各商品グループにも結果を説明し、現場の声に耳を傾け、必要に応じて講演会やセミナーの開催も手がけたい。

比良井部会長(右端)らJJC幹部は6月にアイルランガ経済担当調整相(左から2人目)と会談した。アンケートはさまざまな議論を展開する糸口になる=同

 ——政府への政策提言で重視することは。

 ◆アンケートの自由記述を丁寧に読み込むことだ。そこに企業が現場で直面する問題や実感が詰まっている。可能な限り、その声を政府側に届けたい。

 こうした調査データはJJC幹部が政府高官と対話を始める入口にもなる。例えば、為替の問題だけを突然取り上げるのは難しいが、調査結果を示せば具体的な議論を始めやすい。

 政府に対しても改善を求めるだけでなく、評価できる点を伝えることが大切だ。「日本企業はインドネシアを公平に評価している」という認識を持ってもらうことが、建設的な対話につながる。

 ——投資や事業拡大における主な障害は何か。 

 ◆特に注視しているのは中間層の消費動向だ。中長期的には有望な市場だが、中間層が縮小しているのではないかとの懸念もあり、市場が継続的に拡大するのかを企業側は慎重に見極めている。

 政策の予見可能性も課題だ。社会情勢についても、日本の本社では「デモが多い」という情報だけが伝わり、現地側が実情を説明して投資判断への理解を得るのに苦労しているケースが見られる。

 輸入規制も新規参入企業にとって大きな障壁になる。国内生産を増やす方向性には意味があると理解するが、国内で代替調達ができない原材料や設備まで規制がかかれば、事業継続そのものに影響する。制度変更だけでなく、担当の窓口によって運用が異なることも予見可能性を低下させる原因だ。

5月にJJCとジェトロが発表したアンケートでは、中東情勢緊迫化によるコスト増の転嫁が課題になっていることが浮き彫りになった=同

 ——中国企業の存在感が強まる中、日本企業の強みは。

 ◆ものづくりの現場力や人材育成、改善活動、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)などを長年積み重ねてきた点が挙げられる。日本企業には、進出先や現地企業とともに成長しようとする姿勢がある。

 デジタル化についても、ソフトウエアやアルゴリズムを導入するだけでは意味がない。現場でデータを集め、生産性や品質の向上に結びつけることが重要だ。現地企業や人材と一緒に課題を見つけ、改善を積み重ね、インドネシアの資源や人材に新しい付加価値を加えていくことが競争力につながる。

 ——インドネシア人材の育成をどう評価するか。

 ◆日系企業は雇用創出や若年層への職業教育、次世代リーダー育成で大きな役割を果たしてきた。2023年時点で約620万人の雇用創出に貢献し、管理職の現地化も進んでいる。

 調査では約3割の企業が求職者向けインターンシップを活用していた。JJCも労働省と連携して普及活動に取り組んでおり、制度を利用した企業からは若年層のIT人材を高く評価する声もある。

 次世代リーダー育成では、回答企業の約3割がインドネシア社員を日本へ派遣する長期研修を実施していた。25年には約400人が日本式の生産・品質管理やマネジメントなどの研修を受けており、こうした取り組みの結果、多くの日系企業でインドネシア人材が管理職・経営幹部として活躍している。

 今後はデジタル化や人工知能(AI)、グリーントランスフォーメーション(GX)など産業構造の変化に対応できる高度人材が必要になる。大学や職業訓練センターとの連携を深め、企業が求める能力と教育内容を結びつけることで、日系企業が蓄積してきた人材育成の経験をインドネシアの成長につなげていきたい。