インタビュー ALSOKインドネシア誕生へー長尾善信社長インタビュー 日本品質で「ブランド浸透」加速へ
ALSOKグループのインドネシア現地法人2社がこの春統合し、「ALSOKインドネシア」として新たな一歩を踏み出す。日本基準の警備サービスに加え、清掃や人材派遣などを含めた総合建物管理サービス企業へと進化。営業エリアもジャカルタ首都圏(ジャボデタベック)から国内全土に拡大する。統合の経緯や狙いについて、同社の長尾善信社長に聞いた。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

——今回の統合の経緯と狙いとは。
◆グループの現地法人はこれまで2社あった。
一つは「ALSOK BASSインドネシア・セキュリティサービス(ALSOK BASS)」、もう一つは「シールド・オン・サービス(SOS)」だ。
ALSOK BASSは2016年に、1999年から日系企業を中心に警備事業を展開していたBASS社とALSOKが合弁で設立した会社だ。一方のSOSは23年に、将来的な統合を視野に買収した現地の上場企業だ。
ALSOK BASSは日系企業向けの警備ノウハウに強みがある。対してSOSは、警備のほかに清掃や駐車場管理、エンジニアリングなどの人材派遣を含めた「総合建物管理サービス」に長(た)けている。統合後は、これまで個別に提供していたサービスをワンストップで受託し、顧客満足度を高めていく。
——統合会社の社名を「ALSOKインドネシア」にした理由は。
◆グループとして、国内外でALSOKブランドを前面に打ち出す方針を掲げているためだ。
現地警備業界における知名度は一定程度あるものの、シェアが圧倒的に高いわけではない。SOSが持つローカル企業の顧客基盤を活用し、ブランドの浸透を加速させる。
インドネシアでも、これまで日系のお客さまに育てていただき、多くのご意見やご指導をいただいたことに感謝している。当社はこれからも日系企業に貢献する存在であるべきだ。その上で、今後はローカル企業に対しても、日本基準の「ALSOKクオリティー」サービスを提供していきたい。
——営業面での変化は。
◆ALSOK BASSの顧客はジャボデタベックが中心だったが、SOSはスマトラからパプアまで国内全土に拠点網を持つ。今回の統合により営業エリアが格段に広がる。
また、ALSOK BASSが培った高度な警備ノウハウをSOS側にも共有することで、サービス全体の質を底上げできる。機械警備や機器販売、火災報知機、AED(自動体外式除細動器)といったシステム関連商品も、SOSのネットワークを通じて拡販していく考えだ。

——日系企業が求める警備の質とは、具体的にどのような点か。
◆規律や警備員としての立ち居振る舞いなどが挙げられる。しっかりとした周囲の警戒はもちろん、他の警備員との連携、持ち物検査を含む厳格な出入り管理、荷物搬入時の手順遵守といった、きめ細かな運用が求められる。
また、最低賃金の確保など、警備員の雇用に関する法令遵守(コンプライアンス)の徹底も重要だ。こうしたサービス品質への安心感こそが、日系顧客への訴求点になると考えている。 ——主なターゲット層は。
◆警備事業では、工場やオフィス、商業施設、物流施設などが主な対象だ。ただ、人材派遣や清掃まで含めた総合管理サービスとして捉えれば、ほぼ全ての事業者が潜在顧客になり得る。
地域別では、首都ジャカルタでは既存施設の契約切り替えや、既存顧客内でのサービス拡大が重要になる。一方で、ジャカルタ近郊を含む地方都市には依然として開発の余地があり、新規案件の獲得が狙える。
特に新築案件においては、建物完成後の価格競争に参入するよりも、設計段階から関わることが重要だ。監視カメラの配置や警備・清掃の運用設計まで、トータルで提案することで、効率的かつ省力化した提案が可能となり、顧客にとってもメリットの大きい提案が可能になる。

——治安の改善に伴い、警備コストを抑制する動きも出ている。
◆確かに、かつてのように「高コストでも品質が良ければ日系を選ぶ」という構図が通用しにくくなっているのは事実だ。低コストなローカル業者で十分という考え方も広がっている。
しかし、当社へのニーズは依然として根強い。例えば工場や倉庫では、安易に人員を削れば盗難などのリスクを招く。
課題は、顧客の予算が伸び悩む一方で、最低賃金の上昇により当社のコストが増大している点だ。格安業者との単純な価格競争に陥るのではなく、品質やコンプライアンス、提案力で差別化を図り、地域戦略を含めてシェアを拡大していく必要がある。
——IT技術の活用は。
◆既に警備員や清掃員が携行するスマートフォンを通じ、現場の品質管理や勤怠管理を行うアプリを導入している。今後はこれを、総合的な施設管理の枠組みでさらに広げていく考えだ。
統合による全国展開にはメリットがある一方、隅々まで直接足を運んで教育を徹底することには限界もある。遠隔指導やオンライン講習など、社内教育の面でもIT活用は不可欠だ。
——省人化の効果をどう見ているか。
◆大型施設などの案件では、カメラなどの機器を組み合わせることで、省力化・省人化を図る余地は大きい。例えば、商業施設のゲート管理においても、車両チェックと遮断機の操作に別々の人員を配置するのではなく、機械化や運用の見直しによって最適化できる可能性がある。
夜間の駐車場管理でも、常時複数人を配置するのではなく、機械警備や近隣待機を組み合わせる手法が考えられる。
当社としては、最新のデバイス機器と「人の力」を融合させ、必要な安全水準を維持しながらコストを抑制する提案を加速させていく。