インタビュー TDLGプトリCEO「巨大市場が日本IPに期待」ー今月30・31日に大型イベント開催
日本アニメのIP(知的財産)イベント「Merah! Merah! Anime Japan‼」が30、31の両日、南ジャカルタのショッピングモール「ガンダリア・シティ」で開催される。運営を担うデジタルメディア企業トランス・デジタル・ライフスタイル・グループ(TDLG)のプトリ・インダサリ・タンジュン最高経営責任者(CEO)が21日、ジャカルタ日報の取材に応じ、国内におけるIPなどの展望を語った。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

——なぜこのイベントの運営を。
◆このイベントはインドで延べ10万人を動員した「Mela! Mela! Anime Japan!!」の姉妹イベントだ。アニメをはじめ、音楽、映画、企業展示、観光PRまでを横断的に展開する大型イベントである点が特徴で、日本とインドネシア両政府の後援も受けている。
TDLGは近年、IPビジネスの成長性に注目している。日本のIP、特にアニメやキャラクターは国内で高い人気を保ち、ファン層も厚い。インドで開催されたイベントを視察した際、現地反響の大きさを確認できたことから、インドネシアでも大きな可能性を生むと判断し、主催企業として開催をオファーした。
——TDLGについて紹介を。
◆弊社は複合企業(コングロマリット)である「CTコープ」のデジタルメディア部門を担う企業だ。当グループは金融、小売、不動産、エンターテインメントなど多角的に事業を展開しており、TDLGは美容やライフスタイル情報の発信、イベント企画、アーティスト事業などを幅広く手がけている。日本や韓国、タイなどの海外企業との協業も進めており、国内市場にとどまらず、東南アジア全域や日本といったグローバル市場への展開を視野に入れている。
——日本のIPに注目する理由は。
◆インドネシアの人々にとって、日本のIPには強い「ノスタルジー(郷愁)」がある。「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」「ピカチュウ」「ハローキティ」などは、多くの人々の子どもの頃の記憶と深く結びついている。
インドネシアでは、日曜日の朝にテレビで日本のアニメを見て育った世代が非常に多い。そのため、日本のキャラクターは単なる海外のコンテンツではなく、人生の身近な思い出として親近感があるのが強みだ。また、長年にわたり世代を超えて人気を保ち続ける「持続力」にも圧倒的な魅力を感じる。

——今回のイベントは、日本のIPホルダー(権利者)にとってどのような意味があるか。
◆日本のホルダー側にとってもインドネシア市場の可能性を確認できる場になると考えている。
国内では日本のIPに対する現地ファンの熱量は非常に高く、イベントを通じて直接つながることができる。現地の生の需要や反応を見てもらうことで、今後の本格的な進出への信頼につなげてほしい。弊社はこのイベントを単なる一過性の催しではなく、日本のIPがインドネシアという巨大市場へ本格参入するための「入り口」として位置づけている。
——日本IPの進出について具体的にどう支援するのか。
◆CTコープの最大の強みは、グループ全体で網羅的な支援ができる「360度」の支援体制にある。メディアだけでなく、小売、不動産、銀行など多岐にわたる事業を傘下に持つため、現地調査から販路拡大、プロモーション、金融支援までをワンストップで提供できる。これが海外企業にとって最大の利点といえる。
例えば、まず詳細なリサーチを行ってその商品やIPに需要があるか、どのような展開が最適かを見極める必要があるが、その場合、グループが展開するショッピングモールや百貨店などの小売ネットワークを通じて販売機会を提供することが可能だ。
さらに、保有するテレビ局やデジタルメディアを駆使して認知度を一気に高めるほか、銀行部門の決済サービスと連動した割引キャンペーンなども実施できる。
——日本のポップカルチャーをインドネシアで成功させるために、最も重要なことは何か。
◆最も重要なのは、現地市場を熟知した「信頼できるパートナー」を持つことだ。どんなに優れた商品や魅力的なコンテンツであっても、日本で流行しているものをそのまま持ち込むだけでは、国内の消費者に届かないケースも少なくない。
ここで言うローカライズ(現地化)とは、単にコンテンツの中身を翻訳することではなく、伝え方やマーケティング戦略、出店場所、価格設定、さらにはターゲットとする地域を市場のリアルに合わせることを意味する。
インドネシアは巨大な市場であり、首都ジャカルタだけを見てもエリアによって消費者の特徴が全く異なる。若者やトレンド層が集まる「南」、ビジネス街の「中央」、中華系コミュニティーが多い「北」、商業集積地の「西」では、それぞれ違ったアプローチが必要になる。そのため、単なる現地化を超えた、より緻密な「ハイパーローカライズ(超地域密着化)」が必要不可欠だ。
——収益化の方法については。
◆IPビジネスには非常に大きな可能性が秘められている。一つの優れたIPから、何層にも及ぶ複数の収益源(ストリーム)を生み出すことができるからだ。映像やデジタルコンテンツの配信をはじめ、グッズの商品化、飲食(コラボカフェなど)、ライフスタイルブランドとの提携、スポンサーシップなど、収益機会はとても幅広い。
CTコープと組めば、こうした多角的な収益化をグループ内のプラットフォームで一体的に展開できる。日本側にしてみれば現地で複数の仲介業者を通す必要がなくなるため、ライセンスや収益の管理が格段に容易になる。無駄なコストを抑え、より高い利益率を確保することにもつながる。

——IPの対象は、アニメやキャラクターに限られるか。
◆IPはアニメやキャラクターに限らない。ドラえもんのようなキャラクター以外にもアイドルや歌手、テレビ番組、ドラマなどもIPとしてとらえることができる。
日本の往年のテレビ番組やドラマであっても、現地での事業や媒体との相性が合えば協業の可能性は十分にあり得る。CTコープには複数の地上波テレビ局や専門チャンネルがあるため、どのコンテンツがどの媒体に最適かを見極めながら、多角的に展開することになる。
——国内におけるIPコンテンツ保護の課題は。
◆IP保護は継続的な課題だ。国内にはいまだ無許諾商品や海賊版の問題が存在し、政府の関係省庁も取り締まりを強化している。
しかし、不法な商品が完全に市場から排除されるには時間がかかるため、IPホルダー自身もブランドを守る戦略が必要だ。正規品と非正規品では品質が決定的に違う。正規の権利を持つ事業者が、高い品質とブランド価値を守り続けることが重要となる。
CTコープはこの点、現地の法務から運営、物流など、インドネシア特有の実務に精通したパートナーとして支援できる体制を整えている。

——過去に手がけた日本関連イベントから、どのような手ごたえを得たか。
◆昨年、ジャカルタで開催した日本発のファッションショー「東京ガールズコレクション(TGC)」は、非常に良いスタートとなった。日本とインドネシア両方の文化を融合できた点を高く評価している。 日本からは人気アイドルの「FRUITS ZIPPER」やクリエイターの「しなこ」さんらが参加し、国内からも地元のアーティストやデザイナーが多数関わった。単に日本文化を一方的に紹介するだけでなく、インドネシアの文化も日本へ発信する「双方向の取り組み」にできた意義は大きい。
また、単なるショーにとどまらず、現地の若い才能を発掘するミニコンペティションやワークショップも実施した。次世代の育成という要素を加えた点は、弊社らしい多角的な展開だったと確信している。
——CTコープと日本企業の関わりについて。
◆日本企業からはインドネシア進出の相談を受けることが多い。多くの企業からメールや電話で要望を受けることもよくあり、市場に入る際の有力なパートナーとして認知されていると実感する。優れた商品やサービスを持ちながらもノウハウが分からない中小企業の参入も積極的に支援しているので、ぜひ頼りにしてほしい。
——今後、インドネシアのIPや文化を日本に逆展開する構想はあるか。
◆インドネシアのローカルIPやアーティスト、文化を日本に紹介することは、私の大きな夢の一つだ。日本文化や製品をインドネシア市場に導入するだけでなく、インドネシアの魅力を日本へ輸出していく双方向のビジネスモデルを目指している。既に具体的な構想は動き出しており、しかるべき段階で詳しく発表できると考えている。
■プトリ・タンジュン氏略歴
プトリ・インダサリ・タンジュン氏は複合企業CTコープ創業者のハイルル・タンジュン氏の長女で、同国の若者文化やクリエイティブ市場をリードする起業家の一人。
1996年生まれ。米サンフランシスコのアカデミー・オブ・アート大学でマルチメディア・コミュニケーションを専攻した。10代からイベント企画やメディア事業を自ら立ち上げ、若い世代の熱量をビジネスに結びつける実績を重ねてきた。2019年には、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前大統領の特別スタッフ(若者・起業担当)に最年少で起用され、政権への政策提言や若者支援の枠組みづくりを担い注目された。
アニメや音楽、美容、ファッションなどの日本発コンテンツを、インドネシアの若者や女性層の生活感覚に合わせて展開する上で、プトリ氏が率いるTDLGは有力な現地連携先の一つに位置づけられている。