インドネシアニュース 米軍機の領空通過案に主権侵害の懸念ー米と防衛協力格上げで国内に慎重論
インドネシアと米国の防衛協力を巡り、米軍機にインドネシア領空の包括的な通過を認める案が浮上し、物議を醸している。13日に米ワシントンで開かれた両国の国防相会談で議論されたとされ、インドネシア国防省は「検討中」としているが、主権侵害への影響もあるだけに、国内では慎重論が出ている。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

■協力格上げの裏で
今回の議論の発端となったのは同日行われたシャフリ国防相とヘグセス米国防長官による会談だ。会談では、両国関係を「主要防衛協力パートナーシップ(MDCP)」に格上げすることで合意。共同声明では、①軍の近代化と能力構築、②訓練と専門軍事教育、③演習と運用協力――の三本柱が示された。海洋・水中分野の防衛技術協力や特殊部隊の訓練強化も盛り込まれ、防衛協力は新たな段階に入った。
問題となったのは、MDCPとは別に協議されている米軍機の領空通過に関する意向表明書(LOI)の草案だ。一部で「インドネシア側が承認した」との報道が流れたが、国防省側は「現在内部で検討されているのは暫定草案に過ぎず、法的拘束力はない」と火消しに追われた。
■外務省は機密書簡で警告
この提案を巡り、インドネシア政府内では慎重な見方が広がるとともに、足並みの乱れも露呈した。外務省が国防省に対し、米国への過度な接近が中国などの周辺国を刺激するとして、合意を急がないよう求める「緊急・機密」の書簡を4月初旬に送付していたことが判明した。
今回の騒動に対し、政府は領空通過案を精査中との立場だが、軍用機への開放は主権侵害を招きかねない。国益の観点から慎重かつ十分な議論が不可欠だ。