インドネシアニュース 「大統領案件」格上げで新局面ー日イ、安保協力を包括深化

小泉防衛相のプラボウォ大統領表敬は単なる外交儀礼にとどまらず、日本の防衛装備輸出がインドネシア国防相との実務的協議から、大統領の直轄案件へと格上げされた節目になったといえる。日本の対インドネシア防衛協力は、従来の巡視船や警備艇の供与から、中古護衛艦の移転や軍事情報の共有を含む包括的な安全保障協力へと枠組みを大きく広げつつある。
両国の防衛協力の出発点は2006年にさかのぼる。マラッカ海峡での海賊や海上テロ対策として、インドネシア海上警察向けに巡視船を供与した。当時は政府開発援助(ODA)を活用した案件だったが、防弾措置を施した船艇は当時の武器輸出三原則が定める「武器」に該当したため、政府は特例措置として対応した。
その後、日本政府は法制度の整備を進め、15年にはインドネシア、さらにASEAN加盟国との間で初となる外務・防衛閣僚会合(2プラス2)を設置。海洋安全保障や防衛装備・技術協力を公式な議題に据えた。21年の第2回会合では、当時国防相だったプラボウォ氏が出席し、防衛装備品・技術移転協定への署名が行われた。
しかし、この段階では具体的な装備移転は限定的だった。日本側が防衛装備品の輸出に慎重な姿勢を維持していたこともあり、戦闘艦艇をはじめとする完成装備品の移転には高い障が存在したためだ。
流れが変わったのが、24年10月のプラボウォ政権発足である。25年1月、中谷元防衛相(当時)がインドネシアを訪問してシャフリィ国防相と会談し、プラボウォ大統領を表敬した。また同じ時期に日本政府は、政府安全保障能力強化支援(OSA)を通じて高速警備艇の供与を決定した。
さらに今年4月、日本政府は防衛装備移転三原則の運用指針を改正した。直後の5月には小泉、シャフリィ両防衛相がDCAに署名し、人的交流や共同訓練、海洋安全保障、防衛装備・技術協力を包括的に推進する枠組みが整えられた。
今回の護衛艦移転は、両国にとって相応のメリットが見込める。インドネシア側にとっては中古護衛艦であっても日本側の訓練や維持整備、運用支援が一体となって提供されれば、周辺海域の監視や哨戒能力を早期に高めることができる。
一方の日本側にとっても、エネルギー輸送や物流を支える海上交通路(シーレーン)の要衝にあたるインドネシアとの連携が緊密化すれば、日本の防衛産業基盤の維持・強化にも寄与する。同盟関係の単純な拡大とは異なり、法の支配に基づく海洋秩序を維持するための、多層的な安全保障ネットワークの構築につながるものといえる。