インドネシアニュース 「ジャカルタ縁日」突然の中止ー資金難で迷走、困惑と不信広がる

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 中央ジャカルタのバンテン広場で23、24日の両日に開催予定だった日本文化イベント「Connext Japan Djakarta Ennichi 2026」(ジャカルタ縁日)が、開幕初日の23日未明、急きょ中止された。主催側は「技術的・運営上の問題」と理由を説明しているが、出展者や出演者、来場予定者の間で困惑が広がっている。実行委員などの関係者に話を聞いた。
(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

数万人の来場が予定されていた会場のバンテン広場。解体されたテントがむなしく広がる=ジャカルタ日報撮影

■突然キャンセルに憤り

 「数億ルピア(約数百万円)が未払いで困っている。主催者からは何の説明もない」。23日昼過ぎ、数万人の来場者でにぎわう予定だったバンテン広場では、西ジャワ州から来た設営業者がステージやテントの解体作業を黙々と進めていた。 

 業者によると、前日の22日から作業を開始して70のテントを設営したが、23日午前2時に突然中止がアナウンスされ、やむなく撤去に追い込まれたという。イベントの関係者によると、出展を予定していた各テナントから事前に集めた出展料の払い戻しもめどが立っていない。

 観客の失望も大きい。中部ジャワのジョグジャカルタから電車で8時間かけて来たという大学生は「今、イベント中止を知ってがくぜんとしている。ホテルも3泊分予約した。一緒に来た友人は(スマトラ島の)ジャンビ州から飛行機で来た。中学生のころから日本のアニメファンで、数カ月前から楽しみにしていたのに」と憤りを隠さない。

■旧縁日祭受け継ぐ

 「ジャカルタ縁日」は、南ジャカルタのブロックM地区で2010年から19年まで開催されていた日本文化イベント「Ennichisai(縁日祭)」を受け継ぐ催しとして企画された。かつての縁日祭は日本食やみこし、コスプレ、アニメなどを通じて同地区の「リトル東京」としてのイメージを象徴する行事だった。

 今回中止されたイベントは入場無料で、3万~4万人の来場を目標としていた。公式サイトでは「Ennichisai is Back(縁日祭が戻ってきた)」と縁日祭の復活を前面に掲げ、日本の地方紹介や伝統芸能、ポップカルチャーを融合させた交流の場にすると説明されていた。

■開催まで迷走

70のテントを解体する設営業者。損失は数億ルピアにも及ぶという=同

 しかし、開催に至るまでの調整は難航し、延期を重ねていた。

 当初の段階では25年9月に西ジャカルタのコタ・トゥア地区で開催する計画で、ジャカルタ特別州のプラモノ知事も「国際文化都市としてのジャカルタを示す機会」として支持を表明。実行委員長を務めるハルディヤント・ケネス州議会議員も「若者や日本文化ファンのための創造的な空間を作る」と意気込みを語っていた。 

 しかし、前月の8月末にジャカルタ市内で発生した大規模デモなどを理由に、26年5月16、17日への延期を発表。さらに直前になって23、24両日への再延期と、バンテン広場への会場変更が決まるなど、迷走が続いていた。

 実行委員会内部の不協和音も表面化している。

 ケネス氏は5月23日の中止発表に際し、SNS上で「私も初めて知った」とコメントを投稿。「4月に実行委員長を辞めたが、その後も名前を使われて憤っている」とも発言した。実行委員会は動画を通し、「ケネス氏は4月で辞任しており、今回の中止とは関係ない」と発表した。

 一部の関係者からは「同意のないまま実行委員として名前を載せられ、非常に迷惑している」との不満も聞かれ、組織運営の不透明さが浮き彫りになっている。

■実行側「再開催目指す」

 実行委員会の実務責任者を務めるフェルリントン・ワルド氏が24日午前、ジャカルタ日報の電話取材に応じた。主なやりとりは以下の通り。

 ——なぜ開幕直前の中止に至ったのか。

 ◆資金調達が難航し、直前まで開催の可能性を模索して粘った結果、判断が遅れてしまった。

 ——遅くとも1週間前など、猶予を持って公表すべきだったのではないか。 

 ◆その指摘は重く受け止めている。

 ——設営業者などへの補償は。

 ◆現在、対応を協議中だ。リベンジを狙い、もう一度開催する方向で動いている。

 ——今回の中止騒動の公式な説明会を設ける予定は。

 ◆近く公式インスタグラムなどで声明を出す予定だ。

 ——一部の関係者を同意なく実行委員に就任させたというのは事実か。

 ◆アドバイザーとしてスポンサー紹介などで協力していただいた。意思疎通が不足していたと自覚している。

■他のイベントに影響も

23日未明に突然公開された開催中止のアナウンス。SNS上では非難が相次いでいる=同

 今回の混乱について、内情に詳しい別の関係者は「構想段階から資金調達で行き詰まっていた」と話す。「ワルド氏は過去の縁日祭にも関わっており、日本文化を広めようという熱意はあった。ただ、ジャカルタ特別州からの公的支援を見込むなど、資金計画に甘さがあったことは否めない」と肩を落とす。

 また、今後の文化交流に与える影響について「州政府を巻き込む形で日本文化のイベントが失敗し、SNSでも炎上した。今後、同種のイベントが行政の支持を得ることが難しくなるのではないか」と懸念を隠さない。

 多くのファンを失望させた実行委員会は、未払い代金の精算や関係者への誠実な説明など、速やかにその責任を果たさねばならない。