インタビュー 「紙でも渡せる電子契約」を事業化へーリーテックス・小倉隆志氏インタビュー
電子契約・電子署名サービスを手掛けるリーテックス(本社・東京都新宿区)は、独自技術「ワンタイムデジタル署名」を用いた電子契約サービス「ONEデジ」の中核特許をインドネシアで取得した。同社にとって東南アジア諸国連合(ASEAN)で初の権利化で、現地企業との合弁や実証実験を通じた事業化を構想している。同社の小倉隆志社長に技術の仕組みと進出計画を聞いた。

——「ONEデジ」は、どのような仕組みで文書を検証するのか。
◆まず、文書と署名ごとに一度限りの署名情報を生成する。これが「ワンタイムデジタル署名」だ。その署名を二次元バーコードとして文書に表示し、電子ファイルで送付することも、紙に印刷して渡すこともできる。
受領者がスマートフォンなどでバーコードを読み取ると、クラウド上の署名台帳を経由して電子文書の原本を確認できる。「いつ、誰が、どの文書に署名したか」という記録は、ブロックチェーン技術を活用した台帳に残す。証明の根拠を文書の中ではなく、文書の外側にある台帳へ置くことが技術の要点だ。
——従来型の電子署名との違いは。
◆従来の認証局型の電子署名では、認証局が発行した電子証明書や秘密鍵を署名者ごとに管理し、電子ファイルの内部にある署名データを解析して検証する。このため、文書を紙に印刷すると電子署名の検証機能が失われる。
ONEデジは、署名の記録と検証の根拠を外部の台帳に置いている。印刷されたバーコードから電子原本を呼び出せるため、紙になっても確認できる。署名者ごとの電子証明書を発行や更新、失効を管理する認証局の運営費が不要なため、当社試算では従来方式の約1000分の1のコストで提供できる。インドネシアの認定認証局(PSrE)のサービスと組み合わせて提供することも可能だと考えている。
——署名後の文書を再編集できる機能も特徴だ。
◆従来の電子契約では、契約条件を変更する場合、修正した文書を別ファイルとして作り直し、改めて署名することが一般的だ。変更契約が重なると複数のファイルが存在し、どれが最新の契約なのか分かりにくくなる。
ONEデジの新サービスであるONEデジPREMIUMでは、署名済みのワード文書からマイクロソフト・オフィス・オンラインに移動し、文書を直接編集して再署名できる。再署名の履歴は時系列で管理されるため、同じ文書が継続して更新されたことを確認できる。変更前後の履歴を一つの電子契約ファイルで管理でき、変更契約書を別途作成する負担を減らせる。
——今回取得した特許は、どのような内容か。
◆今回認められたのは、文書を受け取った人が電子署名から原本にたどり着き、手元の文書がすり替えられていないかを確認する「閲覧・検証」の仕組みだ。
文書に付された二次元バーコードから文書固有の情報を読み取り、署名記録と原本の保管場所を順番に参照する。原本を取得して手元の文書と照合し、一致すれば真正な文書、異なれば改ざんの可能性があると判断する。暗号技術そのものではなく、電子署名から原本をたどって検証する一連の方法を権利化した。

——なぜインドネシアをASEAN展開の起点に選んだのか。
◆インドネシアは人口、経済規模ともASEAN最大で、今後も成長が見込まれる。
一方、行政手続きや企業間取引では、今なお多くの紙書類が使われている。完全なペーパーレス化を前提とした欧米型の電子署名サービスだけでは対応しきれない実務が残っているため、当社が価値を発揮しやすい市場だと判断した。
——どのような業界への導入を想定しているのか。
◆第一に想定しているのが資源・エネルギー分野だ。石炭やニッケルなどの輸出では、検査成績書や船積書類が代金決済の根拠となる。港湾や鉱山の現場で紙を使用していても、受領者が電子原本を確認できる。
製造業や自動車部品では、受発注書、検査成績書、出荷証明書などに活用できる。日本の本社では電子データ、インドネシアの工場では紙というように運用が混在していても対応できる。
貿易・物流では船積書類やインボイス、建設・インフラでは変更が頻繁に発生する工事請負契約、金融・リースでは契約書や担保関係書類の真正性確認を想定している。
——事業化に向けた今後のスケジュールは。
◆現地パートナーと協議しており、まず今年秋の基本合意を目標とし、できれば年内に現地法人を設立したい。パートナー側に事業運営や販売を担ってもらい、当社は日本から技術とソフトウエアのライセンスを提供すると言う役割分担だ。技術やサービス自体はすでに完成しているため、条件が整えば27年3月末までにSaaS(サービスとしてのソフトウエア)の販売を始めたいと考えている。