インタビュー 政府への提言強化、他国商工会とも連携もーJJC板垣副理事長「耳に痛い話も率直に」
ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)の副理事長に就任した板垣誠治・双日インドネシア社長がこのほど、ジャカルタ日報のインタビューに応じた。法人部会長も務める板垣氏は、会員企業の課題を拾い上げ、インドネシア政府との対話や提言に結びつけるロビー活動の強化を最優先課題に掲げた。半導体や自動車、新エネルギー、電力供給などを巡り、政府との対話を重ねる考えを示し、「必要なことを率直に伝える」副理事長としての役割を強調した。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

——就任の抱負を。
◆副理事長、法人部会長として各商品グループと議論を深め、ロビー活動の強化に取り組みたい。会員企業が日常的に集まって課題を共有し、話し合う。その内容をインドネシア政府に広く伝えていくことが土台になる。
私自身の役割は、佐藤健治理事長が政府や会員企業との関係を築く中で、副理事長として必要なことを率直に伝えることだと考えている。時には相手にとって耳の痛い話もあるかもしれないが、萎縮せずに必要なことを伝えていくことが必要だと思う。
——先日、アイルランガ経済担当調整相を訪問した。
◆アイルランガ氏とは幅広く情報交換した。例えば、インドネシア政府は半導体産業の育成に強い関心を持っている。人材育成や将来の産業化に向けて日本への期待も感じた。
こうした大きな課題はJJC幹部だけで解決策を出せるものではない。多くの会員企業の知見や方向性を学びながら、日本企業全体として何ができるかを、大使館や日本政府とも対話しながら見出していきたい。
——政府要人との面談は、JJC側から要望しているのか。
◆基本的にはJJC側から要望している。これまでは、要人一人あたり年1〜2回といった頻度にとどまることもあった。今後は、面談で出た課題や宿題を持ち帰り、会員企業と相談したうえで再び相手側にフィードバックする流れを強めたい。
重要なのは、要人と会うこと自体を目的にしないことだ。政策決定に関わる人たちが何を考え、日本企業に何を期待しているのかを正しく把握しなければ、その後の活動につながらない。まずは対話の機会を増やすことが重要だと思う。
——プラボウォ政権発足後の事業環境をどう評価しているか。
◆投資促進と成長重視の基本方針が維持されていることは明確で、評価できる。(今年3月の)プラボウォ大統領の日本訪問もあり、日本とインドネシアの経済関係がこれまでより一歩踏み込んだ段階に進むという期待感もある。一方で、国際情勢が不安定な中、インドネシアが自国経済や企業を守るために、内向きな政策を打ち出す場面も出てきている。
JJCとして重要なのは、一つ一つの政策に良し悪しをつけることではない。短期的な変化だけを見るのではなく、プラボウォ政権が中長期的に何を目指しているのかを理解することが大切だ。
——最低賃金や人件費の上昇については、製造業を中心に影響が大きいのではないか。
◆国が成長する過程で、一人あたりの所得や人件費が上がることは、ある意味で自然な流れだ。これを前提に、いかに効率的に経営し、現地人材を育て、重要な職務を任せていくかが大事になる。
人件費の抑制だけにエネルギーを注いでも限界がある。むしろ、効率的な経営や製造、運営を進めることと、そのために必要な投資経営環境を整えることが必要だ。
日本企業は国内でも人件費上昇や人材確保の課題に向き合ってきた。その経験は、インドネシアでも強みになり得る。
——プラボウォ大統領の訪日時における日イ企業の投資合意について、どう受け止めているか。
◆合意段階から実際のビジネスとして形にしていくことが、互いの信頼にとって大切だ。一部では既に実施、稼働に進んでいる案件もある。そのような実行の段階に持っていくことが重要だと考えている。
——中国や韓国勢がインドネシア市場で存在感を増している。日本企業の強みは。
◆投資額など同じ土俵で競争することは、以前ほど重要ではなくなっていると思う。競争環境が一段と激しくなっているのは事実だが、日本企業には他国企業が容易にまねできない強みがある。
品質、人材育成、技術の定着、職場の安全や環境への真剣な取り組みなどだ。こうした蓄積の上にインドネシアにおける日系企業の存在がある。
製造業だけでなく、サービス業にも可能性がある。きめ細かいサービスや顧客への丁寧な対応を通じて、日本ブランドや日本式サービスは一定の地位を築いている。
非製造業、サービス業でも、今後インドネシアで投資を積み重ね、成長していく余地は大きい。
——国内で活動する「インドネシア中国商会総会」が投資環境改善を求める書簡を大統領宛てに送ったとの報道がある。
◆中国企業は、インドネシアが投資誘致時に示した有利な条件を踏まえて、ニッケル精錬などの資源分野を中心に大規模投資を進めてきた。その後、規制や投資条件、輸出条件に変化が出た際、商工会議所として非常にストレートにインドネシア政府へ意見を伝えた点は印象的だった。相手の耳に痛いことを率直に伝える。その積極性には学ぶべき点があると思う。
ただし、JJCが意見を伝える場合には、特定の企業や日系企業だけに有利な施策を求めるのではなく、インドネシア企業や他国企業も含めた一般的な企業活動、投資環境の改善につながるという公平な視点が重要だ。その意味でも、米国、欧州、中国など他国の商工会議所との関係構築は欠かせない。法人部会としても、そうした連携を強化していきたい。