インタビュー 電通、インドネシアでB2B広告開拓ー蓄積ノウハウで現地の潜在需要狙う
電通インドネシアは7月1、2日にジャカルタで開催される企業対企業(B2B)ソフトウエア・SaaS(サービスとしてのソフトウエア)に特化したイベント「B2Bテックアジア・インドネシア2026」のスポンサーとして参加する。日本で蓄積した広告の知見を生かし、現地での存在感をさらに高める。今回の狙いなどについて、電通インドネシアの松本繁インテグレーティッド・ビジネス・マネージャーに聞いた。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

——スポンサーとしての狙いは。
◆参加の目的は主に二つある。一つは、日本で培ったB2Bブランディングのノウハウをインドネシアでも展開することだ。もう一つは、顧客データを活用したマーケティングソリューションを来場企業に広くアピールする。今回の来場者や出展企業はソフトウエアやテクノロジーに関心を持つ企業が中心と聞いており、広告・ブランディング・顧客データ活用を組み合わせた提案ができると考えている。
——現地でのB2Bブランディングの可能性は。
◆一般消費者向け(B2C)と異なり、B2B企業は社名や事業内容が社会に認知されにくいという課題を抱えている。そのため、B2B企業における広告・ブランディングの役割は、単なる販売促進にとどまらない。
日本では、B2B企業が広告を活用する目的は大きく三つに整理できる。第一は「採用強化(リクルーティング)」だ。会社の認知度を高めることで「この会社で働きたい」と思ってもらい、新卒・中途採用の応募増加につなげる。特に知名度不足で悩む企業にとって、優秀な人材を獲得するための重要な手段となっている。
第二は「社員のモチベーション向上」だ。企業の社会的知名度が高まれば、社員が自社に誇りを持てるようになる。家族や友人に「自分はこの会社で働いている」と自信を持って言える状態を整えることは、組織力の向上や人材定着にもつながる。
第三は「営業・事業成長の支援」。B2B企業が自社の認知度や信頼性を高めることで顧客との接点を創出し、問い合わせや新規商談の獲得へとつなげていく。広告を通じて市場における存在感を確立することが、将来的なリード(見込み顧客)獲得や事業拡大の基盤となる。
日本ではこうした目的を背景に、インパクトのある広告表現や戦略的なメディア活用を通じて企業価値を高める事例が増えている。インドネシアでも今後、人材獲得競争の激化や市場競争の進展に伴い、B2Bブランディングの重要性はさらに高まる。現地ではまだこうした需要が十分に掘り起こされていないため、先行して取り組む余地は大きい。

——日本でのB2B広告のノウハウとは。
◆大きくは、最適な広告クリエイティブ(表現)の設計と、それをどう届けるかというメディア活用だ。特に重要となるのが、経営層や経営幹部といった「企業の意思決定者」へいかに接触するかという視点だ。
日本では、ニュース番組やタクシー広告、ビジネス街の屋外広告に加え、特定の企業や業界に標的を絞るデジタル広告などを組み合わせ、多角的な接点を構築する手法が主流となっている。一方、インドネシアではこうしたB2B向けの広告接点やメディア活用が、日本ほど体系化されているわけではない。
例えば、日本のビジネス層に有効なタクシー広告も、インドネシアの経営層は主に自家用車や運転手付きの車で移動するため、そのまま応用することは難しい。まずは現地のビジネス層の行動動線や接触メディアを見極め、現地市場に最適化した認知・信頼獲得のマーケティング手法を確立していく。ここに大きな余地があると考えている。
——顧客データを活用したマーケティング支援の具体的な取り組みは。
◆電通インドネシアではカスタマー・エクスペリエンス(CX=顧客体験)領域も扱っている。具体的には、クライアント企業が保有する顧客データを基盤に、顧客と企業のあらゆる接点を最適化する戦略だ。広告による認知獲得から、その後の見込み顧客を優良顧客へと育てる「ナーチャリング(顧客育成)」の領域までをカバーする。
単一のツールや機能を提供する競合は存在するが、電通の最大の強みは広告、ブランディング、メディア設計、そしてデータ利活用までを一気通貫で統合できる点にある。
またイベント当日は、B2Bマーケティング領域の第一人者が日本から現地入りし、ブランディングや最新のマーケティング手法の可能性について講演を行う予定だ。
今回の出展を、日本で蓄積した当社の知見を証明し、インドネシアの企業に新たな成長の選択肢を提示する契機としたい。