グルメ 揚げると絶品、知る人ぞ知るスクンの魅力

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 インドネシアには、日本ではなかなかお目にかかれない食材がたくさんあります。ナシゴレンやサテは日本でも知名度が上がってきましたが、もう一歩踏み込まないと出会えない食材というのも実は多くて……。今回ご紹介するのは、そんな「知る人ぞ知る」食材の一つ。インドネシア語で「Sukun(スクン)」と呼ばれる、パンノキの実です。「何それ?」というあなた、ぜひ最後まで読んでみてください。滞在中に一度は食べておくべき食材だと、筆者は本気でそう思っています。      

【フードライター ジャカ飯(jakameshi)】

■フルーツなのに「パン」の実?

①「パンの実」ことスクンの実。加熱するとパンのような香りがすることから名づけられた=Pixabayより

 スクンは日本語で「パンノキの実」、英語では「Breadfruit(ブレッドフルーツ)」と呼ばれます。その名の通り、加熱するとパンのような香りがすることからこの名前がついたと言われています=写真①。フルーツに分類されながら、甘みはほとんどなく、でんぷんを豊富に含むという不思議な存在です。

 原産地は太平洋の島々やニューギニア周辺とされており、古くからポリネシア、メラネシア、そしてアジアの熱帯地域で主食として食べられてきた歴史があります。カロリーと栄養価が高く、かつて大航海時代には船員の食料として注目されたという歴史的な背景もあったりします。

 インドネシアを含む東南アジアでは、スクンは昔から庶民の食卓に根ざした食材です。主食として食べられる地域もあれば、おやつとして揚げて食べる地域もある。ポテトチップスのような感覚でサクサク食べられるスナックとしても親しまれています。

 余談ですが、スクンという名前はジャワ語の「スク(居住する)」に由来するとも言われており、それだけ人々の生活に密着した木だったということかもしれません。

■運とタイミングが必要

 率直に言うと、ジャカルタでスクンを食べるのは少しだけ「運とタイミング」が必要です。レストランのメニューにはまず見かけないし、スーパーマーケットのフルーツコーナーにも並んでいない。どちらかといえば、生活の隙間(すきま)に潜んでいる食材です。

 筆者がスクンに初めて出会ったのも、知り合いのお母さんが揚げて販売していたのがきっかけでした。ある時突然「これ食べてみて」と渡されて、口にした瞬間「何だこれ⁉」となったわけです。こういう出会い、インドネシア生活の醍醐味(だいごみ)ですよね。

 その後もたまに道ばたで見かけることがありまして、筆者が中央ジャカルタに住んでいたころはBenhil(ベンヒル)エリアで何度か遭遇しました。売っているのは小さなワルン(食堂)や屋台が多い印象です。

 スーパーマーケットにあるインドネシアのスナックコーナーに揚げたものが販売されていることもまれにありますが、時間が経過しているものが多く、あまりおすすめとは言いにくいです(油が酸化していることもある)。「Shopee(ショッピー)」や「Tokopedia(トコペディア)」などのECプラットフォームでも見かけることがあるので、自宅でじっくり食べたい方はそちらを利用するのも手ですね。

■揚げると絶品

②スクン・ゴレン。美味しいがカロリーの高さに要注意=ShutterStock

 おすすめの食べ方は断然スクン・ゴレン、つまりスクンのチップスです=②。薄くスライスして揚げるだけ。シンプルですが、これが本当に止まらない美味しさなんです。

 味の表現が難しいのですが……「パンの実」と言われればそんな気もするけれど、個人的にはパンというより「芋」に近い印象です。サツマイモとジャガイモを足して2で割ったような味、とでも言うべきか。フルーツなのにどこか穀物感があって、揚げることでほくほくとした甘みと香ばしさが引き出されます。感覚的にはフレンチフライや揚げサツマイモに近いかもしれない。

 揚げ系スナックといえばSingkong Goreng(シンコン・ゴレン、揚げキャッサバ)やPisang Goreng(ピサン・ゴレン、揚げバナナ)が定番ですよね。個人的にはそこにSukun Goreng(スクン・ゴレン)も並ぶ……というより、正直一番美味しいと思っています。素材の素朴な味がそのまま出てくる感じがたまりません。

 筆者の個人的な経験で言うと、家族や友人を含めて「何これ、めっちゃ美味しい!」以外の反応をした人を見たことがありません。何度か日本へのお土産に持って行ったこともありますが、毎回好評でした。日本人の味覚にもしっくりくる何かがあるのだと思います。

 揚げる以外の食べ方としては、スープに入れたり、蒸したり煮たりして主食代わりに食べる方法もあります。ただ、筆者のおすすめは圧倒的に揚げ一択。素材の味が一番引き立つのはチップスだと思っています。

■食べすぎには注意

 さて、これだけ美味しいと褒め倒してきたスクンですが、一点だけ注意点があります。フルーツなのにカロリーが高いのです。

 スクンは100グラムあたり約100キロカロリーとされており、これはジャガイモとほぼ同じくらいのカロリーです。さらに炭水化物が豊富で、食物繊維やビタミンCも含まれているという栄養価の高い食材ではあるのですが……揚げてしまうと……そうです、当然カロリーはさらに跳ね上がります。

 「止まらない美味しさ」と書いたことを少し後悔しつつ、それでも食べる価値はあると思います。日本ではなかなか体験できない食材ですから、まあ多少のカロリーくらいは問題ナシゴレンでしょう。

■酒のアテにもおすすめ

 インドネシア生活をしていると、「もっと早く知っていれば……」という食材に出会うことがあります。スクンはまさにその一つ。レストランのメニューには出てこない、でも確かに今日も街の中に存在している、そんな食材です。

 屋台や道ばたでスクン・ゴレンを見かけたら、迷わず買ってみてください。きっとその日のおやつの中で一番の存在感を放つはずです。

 お酒のアテとしてもおすすめですが、カロリー爆弾なので食べ過ぎにはご注意を!