インドネシアニュース 日本、装備移転の試金石にーインドネシアはASEAN中心崩さず

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4日夜、記者会見に答える小泉防衛相=ジャカルタ日報撮影

 今回署名された防衛協力取り決め(DCA)は、両国関係を「親善」から「実務」へ移す節目である。これまでの協力は要員交流、教育、能力構築、共同訓練が中心だったが、今回のDCAはそこに海洋安全保障、防衛装備・技術協力、軍事情報保護の議論を加えた。閣僚、次官、制服組トップを結ぶ「統合防衛対話メカニズム」は、一過性の会談に終わらせず、継続的な制度協力を進めるための枠組みだ。

 最大の意義は、日本の防衛装備移転政策の転換と、インドネシアの海洋防衛力強化が交差した点にある。日本は4月、「防衛装備移転三原則」と運用指針を改正し、同盟国・同志国の抑止力や対処力を高める方針を打ち出した。その直後にインドネシアとDCAを結んだことは、東南アジアで装備・技術協力を広げる上での試金石となる。

 広大な群島国家であるインドネシアは、海上交通路(シーレーン)の防衛や排他的経済水域(EEZ)の監視、離島防衛といった課題を抱える。艦艇や潜水艦、監視、通信、整備支援など、海洋分野での協力余地は大きい。

 ただし、今回の成果を装備輸出の成約と見るのは時期尚早だ。共同声明では、海洋抑止力の向上に資する協力の方向性で一致し、事務レベルの検討を指示したと記すにとどまった。具体的な品目や価格、時期、契約方式については公表されていない。潜水艦など高度な装備の移転には、訓練、維持整備、部品供給、情報保護、事故時の責任分担まで含む長期の制度設計が必要となる。インドネシア側にとっても、財政負担、国内産業への波及、既存装備との互換性は重要な判断材料だ。 

 政治的な含意も慎重に見極める必要がある。シャフリ国防相は今回の協力について、国益、国内法、自由かつ積極的な外交、紛争の平和的解決、国際法尊重と整合する範囲で進めるとした。共同声明がASEANの中心性や包摂的な多国間関与を明記したのは、インドネシアが日本との防衛協力を深めつつ、特定陣営への参加と見なされることを避けるためだ。中東情勢が緊迫化する中、こうした中立志向はより強まっている。 

 今後の焦点は3点に集約される。第一に装備・技術協力の具体化、第二に共同訓練の高度化を可能にする情報保護枠組みの構築、そして第三にASEANの中心性と日米主導の抑止協力をいかに両立させるかである。