アリフおじさんに聞く!身近な疑問 第4回 場所の確認で気持ちを推し量る?ーアリフおじさんに聞く!インドネシアの「なぜ?」

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インドネシア人のやり取りでは、質問の背後にある気持ちを考えることが重要となる=Shutterstock

 カイくん(以下、カ)  アリフおじさん、インドネシア人の友達から、よく「今どこ?」って聞かれるんです。

 アリフおじさん(以下、ア) 「ラギ・ディ・マナ(Lagi di mana)?」だね。

 カ そうです。朝でも昼でも、突然メッセージが来て「今どこ?」。最初は、どうしてそんなに僕の居場所を知りたいんだろう……と思いました。

 ア 日本人からすると、少し踏み込んだ質問に感じるかもしれないね。でも、インドネシアでは必ずしも「場所だけを知りたい」というわけではないんだ。

 カ 場所を聞いているのに?

 ア もちろん、本当に居場所を確認する場合もあるよ。でも親しい人同士では「今、何してる?」「話せる?」「元気にしてる?」という軽い呼びかけのように使われることも多い。

 カ 日本語だと「今何してる?」に近いのですね。

 ア そうだね。「Lagi di mana?」と聞いて、「家にいるよ」と返事があれば「今日は何してるの?」と会話が続くし、「モールにいる」と答えれば「買い物?」となる。会話を始めるきっかけなんだ。

 カ なるほど。僕は毎回、住所まで答えた方がいいのかと思っていました。

 ア そこまで詳しく答えなくていいよ。「Di rumah(家にいる)」「Di kantor(会社にいる)」「Lagi di jalan(移動中)」くらいで十分だ。

 カ そう考えると、かなり気軽な質問なんですね。

 ア そうだね。インドネシアでは、家族や友人との日常的なやり取りが比較的多い。「今どこ?」「もう着いた?」「もう帰った?」といった短い言葉を交わすことで、お互いの様子を確かめる。

 カ 日本だと、毎日何度も居場所を聞かれると、少し不思議に感じる人もいそうです。

 ア 文化によって、人との距離の取り方は違うからね。インドネシアでは、相手の状況を知ることが、その人を気にかけているという意味になる場合もある。「無事に着いたかな」「まだ仕事かな」と心配して連絡することもある。

 カ 連載第1回で取り上げた「もう食べた?」に少し似ていますね。

 ア そうだね。「もう食べた?」も、食事そのものより、相手の体調や生活を気にかける言葉だっただろう。「今どこ?」にも、それと似たところがある。

インドネシアでは道路渋滞に巻き込まれることが多く、現在地を尋ねられることが少なくない=同

 カ 「今どこ?」をよく尋ねる理由は他にもありますか?

 ア あるよ。ジャカルタのような大都市では、交通事情も大きい。

 カ 渋滞ですね。

 ア そう。「何時に着く?」と聞いても、渋滞次第では本人にも分からないことがある。それなら「今どこまで来た?」と聞いた方がわかりやすい。

 カ 確かに。「7時に着きます」と言われるより、「スディルマンまで来ました」と言われた方が状況を想像できます。

 ア 待ち合わせでも、約束の時間が近づくと「Sudah di mana?(今どこまで来た?)」と聞くことがある。これは「遅いじゃないか」と怒っているわけではなく、ただ到着までどれくらいか確認しているだけのことも多い。

 カ 僕は最初、怒られているのかと思っていました。

 ア 日本語で「今どこ?」だけ送られてくると、少し強い印象があるのかもしれないね。でもインドネシア語では、もっと日常的に使われる。

 カ 「Lagi di jalan」もよく聞きます。

 ア 直訳すると「道にいる」だけれど、「移動中」「向かっているところ」という意味だね。

 カ それから「OTW」も見ます。

 ア 「On the way」の略だね。WhatsApp(ワッツアップ)などのメッセージアプリでよく使う。「今向かっているよ」という意味だ。

 カ 短い言葉で状況を伝えるんですね。

 ア そう。スマートフォンやメッセージアプリが生活に深く入り込んだことで、「Di mana?」「Sudah sampai?(もう着いた?)」といった短いやり取りも増えた。長い文章を書かなくても、すぐ相手の状況を確認できるからね。

 カ 家族でグループチャットを使う人も多いですよね。

 ア 家族だけでなく、学校、会社、近所、友人同士と、いろいろなグループがある。そこで頻繁に連絡を取り合う人もいる。インドネシアでは、人間関係が日常の中にかなり入り込んでいるんだ。

電車は比較的到着までの時間が読みやすい。車内では動画で家族と通話する風景もよく見られる=同

 カ でも、「インドネシアではプライバシーを気にしない」ということではないですよね。

 ア もちろん違う。そこは大切だよ。人によって感じ方は違うし、世代や地域、相手との関係によっても距離感は変わる。誰にでも居場所を詳しく説明する必要はない。

 カ 答えたくない時は、どうすればいいですか。

 ア 例えば「Lagi ada urusan(ちょっと用事がある)」とか、「Nanti aku kabari(あとで連絡するね)」と言えばいい。

 カ 結局、「今どこ?」という言葉だけではなく、「誰が、どんな場面で尋ねているか」に注意する必要がありますね。

 ア その通り。家族か、友人か、仕事相手なのかで意味が違ってくる。「会いたい」のかもしれないし、「無事に着いたか」を心配しているのかもしれない。ただ話をしたいだけかもしれない。

 カ 日本語にそのまま訳すと、やや強い印象がある言葉ですが、インドネシアでは人間関係をつなぐ意味を持つんですね。

 ア そうだね。文化を理解するときは、言葉の辞書的な意味だけでは足りないことがある。その言葉が、実際の生活の中でどう使われているかを見ることが大切なんだ。

 カ 「もう食べた?」も「今どこ?」も、質問そのものより、その後ろにある気持ちを見るということですね。

 ア いいまとめだね。インドネシアでは、相手に対して少し声をかけることが、親しさや気遣いを示すことがある。「今どこ?」も、そんな日常の一言なんだ。

 カ 次から「Lagi di mana?」と聞かれても、身構えなくて済みそうです。

 ア それでいい。ただ、本当に待ち合わせをしている時は、ちゃんと今いる場所を教えてあげてね。

 カ そこは大事ですね。

 ア とても大事だよ。

 カ 分かりました。今度から「Lagi di jalan」だけで済ませないようにします。

 ア それなら今日の勉強は合格だね。