インタビュー 工業団地を起点に地域活性ージャバベカ・ダルモノ会長 「水・エネルギー・食料がカギ」

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 ジャバベカグループは1989年設立の不動産・工業団地開発会社だ。西ジャワ州ブカシ県チカランの「コタ・ジャバベカ」を筆頭に、工業団地の機能に加え、住宅、商業施設、インフラ、都市管理を組み合わせた「街づくり」を推進してきた。同グループの創業者のセティオノ・ジュアンディ・ダルモノ会長が4月にジャカルタ日報のインタビューに応じ、日系企業との連携を一段と強化していく方針を明らかにした。

 (ジャカルタ日報編集長 赤井俊文)

中央ジャカルタのジャバベカ本社でインタビューに応じるダルモノ会長

 ——貴社のビジネスにおける強みは。

 ◆インドネシア政府を代行するような形で投資家を招致し、土地の準備からインフラ整備、許認可取得までをワンストップで提供できる点だ。村、郡、県、州、中央政府までをつなぐ窓口になることで、複雑な行政手続きに悩まされず、安心して投資できる仕組みを用意している。

 インドネシアでは大統領選挙が5年ごとに実施されるため、投資家は政治の変化に不安を抱く。ジャバベカは経済特区(KEK)などの政府支援を背景に、そうした不確実性を和らげる役割も果たしている。

 他の財閥系複合企業(コングロマリット)との違いは、我々の「集中力」にある。彼らにとって工業団地は、銀行やパーム油など多角化事業の一つに過ぎないが、当社は工業団地を中心とした開発に集中している。我々の工業団地は住宅、ゴルフ場、オフィス、娯楽施設を備えた「統合型都市」でもあり、単なる土地の分譲・賃貸を超えた付加価値を生み出す運営に徹してきた。

 ——現在、貴社の工業団地に入居している日本企業の状況は。

 ◆日本企業は約160工場で、西ジャワ州チカランのMM2100工業団地と同程度だろう。ただし、ジャバベカには日系以外にもインドネシアや韓国、その他の国の企業も多く、全体では2000以上の工場が入居している。不動産開発業者としての強みを生かして土地を積極的に取得し、今後も工業団地の開発を継続する方針だ。

 中部ジャワ州ではシンガポールのセムコープ・デベロップメントと組み、スマラン市の西約21キロに「クンダル工業団地」(2200ヘクタール)を開発中だ。

 ここも工業、住宅、商業を組み合わせた統合型開発だ。西ジャワ州に比べ人件費を抑えられるため、中国、韓国、インドネシア企業からの需要が高く、チカランに次ぐ成長拠点と位置づけている。

西ジャワ州ブカシ県にある「コタ・ジャバベカ」の全体図(イメージ)=ジャバベカのサイトより

 ――観光分野での経済特区開発も進めている。

 ◆バンテン州パンデグラン県にある「タンジュン・ルスン」が代表例だ。ジャカルタからも近く、「バリとベネチアを組み合わせたような国際級リゾート」と位置づけ、ホテルやコンドミニアム、マリーナ、ビーチクラブ、ゴルフ場などを組み合わせた観光都市として開発している。

 さらに、北マルク州の離島モロタイもKEKに指定されており、水産・観光インフラとして整備を進め、冷蔵倉庫、港湾、ホテル、ゴルフ場などを開発している。さらに台湾勢によるリゾート型のリタイアメントホーム(高齢者向け住宅)や、日本関連では太陽光発電、中国勢による造船・水産投資の誘致を進行中だ。

 ——ダルモノ会長からみた日本企業の強みは。

 ◆やはり代表的なのは自動車産業だろう。中国やベトナムの電気自動車(EV)メーカーが台頭する中、日本の優位性はまだ高い。きめ細かい流通網やメンテナンスサービス、そして「高品質で信頼できる」というブランドイメージがあるからだ。 

 中国やベトナムは大量生産を進めているが、そうした商品はコモディティー(大衆)化する。かつては高級品だったジーンズが、誰もが使う一般的な商品になっても、ブランドと高い品質を持つものは高く売れる。日本に期待されるのは、そうしたスペシャリティーだ。

 日本のような高水準の技術を獲得するには時間がかかるが、そうした蓄積が日本の財産だ。

 ただし、インドネシア側は単なる消費市場としてだけでなく、技術移転と国内投資を求めている。その点も忘れないでほしい。

 ——プラボウォ・スビアント大統領が3月末に訪日した際、両国の企業間で226億ドル規模の投資合意が結ばれた。

 ◆日本を重視している証拠であり、喜ぶべきことだ。合計額が巨額で協力分野も多岐にわたるが、プラボウォ氏が本当に日本に協力を期待してるのは「水」「エネルギー」「食料安全保障」の3分野だろう。これらの分野で日本は高い技術を持っているからだ。

社長室前に飾られた祖父の遺影とダルモノ会長。祖父はとても質素な人だったという=ジャカルタ日報撮影

 ——今後の構想は。

 ◆将来は、日本の三井や丸紅といったような総合商社に近い役割も目指したい。2000社に及ぶ工場顧客のため、彼らがより有利に販売し、安価に調達できるよう支援できるからだ。商社が貿易から投資へと事業を広げたように、当社も土地を提供した後、顧客の競争力を高める段階に入りたい。

 創業から37年で4つの工業都市を築いてきた。歩みは速かったと自負しているが、こうした土地開発は一世代で完結するものではなく、次の世代が続けなければならない。「Think Big、 Start Small and Move Fast(大きく考え、小さく始め、速く動く)」という創業理念を受け継いでいってほしい。

 ——プレジデント大学を設立した。教育事業の狙いは。

 ◆研究、教育、地域開発を一体化させ、企業と地域社会の双方を支えるためだ。社会を発展させるには、住民が何を求めているかを調べ、その成果を学生が現場で実行し、外国企業とも協力する仕組みが必要だ。

 ——歴代政権と良好な関係を維持している秘訣(ひけつ)は。

 ◆私が一貫して「大統領を助ける」という姿勢を貫いてきたからだ。権力者に利権をねだる者は多いが、私は逆だ。

 一般的な企業は3年、5年という短期間での投資回収を急ぐが、我々の事業は長期にわたる「社会起業」だ。利益のみを追うのではなく、まず社会と政府を助け、その結果として利益を出す。得た利益は次の開発へ再投資するという好循環を生んできた。

 当社の価値は不動産の面積ではなく、投資家、政府、地域社会を結び、積み上げてきた「信頼」にある。政治的な混乱で一時的な変動はあっても、長期的には安定して進む。

 株主にとっての価値も、事業を通じて国家に貢献しているという点に集約される。株価とは投機的に乱高下するものではなく、信頼とともに安定的に上昇していくものだと考えている。