インタビュー 最重要市場で「選ばれるブランド」にー酒井信吾HMSI社長インタビュー

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 日野自動車のインドネシア販売会社、日野モータース・セールス・インドネシア(HMSI)の酒井信吾社長がこのほどインタビューに応じ、最重要国と位置づけるインドネシアで、顧客・ディーラーとの信頼関係を重視した「選ばれるブランド」を目指す方針を示した。国内商用車市場が伸び悩む中、今後の市場戦略などについて聞いた。(ジャカルタ日報編集長 赤井俊文、写真も)

インタビューに応じたHMSIの酒井信吾社長

 ——社長就任の抱負を。

 ◆フィリピンに3年間勤務した後、1月にHMSI社長に着任した。

 インドネシアは日野グループ全体の中でも最大級の市場だ。大きな利益を期待される立場ではあるが、それをプレッシャーと捉えるのではなく、求められる実績につなげていきたい。

 赴任国は変わったが、基本的な経営方針は継続している。中でも大事にしているのは、オープンで正直なコミュニケーションだ。インドネシアでは、こちらから心を開いて接することが極めて大切だと感じている。

 もう一つ重視しているのは「ブランド・オブ・チョイス(選ばれるブランド)」だ。顧客、ディーラーから選ばれるブランドでありたい。最終的に「日野で良かった」「日野を扱いたい」と思ってもらえることが重要だ。

 ——インドネシアの印象は。

 ◆非常に大きな潜在力を秘めた国だ。聞いていた話やデータからも想像はしていたが、実際に自分の目で見ると、インフラ、資源、人材のいずれを見ても、本当に伸びしろの大きい国だと感じる。

 これは私自身の強い思いだが、商用車メーカーとして製品やサービス、そして雇用などを通じてこの国の発展に貢献したい気持ちがとても強い。単にビジネスの成功を目指すだけでなく、インドネシアという国と社会の成長に寄り添う存在でありたいと考えている。

 ——足元の商用車市場をどう見るか。

 ◆長期的なトレンドで見ると、2012~13年ごろに販売のピークを迎えた。14年からのジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前政権期に入り、18年ごろに一度持ち直したが、20年からのコロナ禍で大きく落ち込んだ。コロナ禍後は緩やかな回復を期待したが、伸び悩みが続いている。

 HMSIの国内シェアは全体の約2割で横ばいだ。市場が好調だった時期には年間3万台程度の販売もあったが、現在は通常ベースで2万台前後の推移にとどまっている。

 ——国内での強みは何か。

 ◆第一に、価格面なども含めて商品がインドネシアの顧客ニーズに合っていることが大きい。特に、厳しい使用環境に耐えうる製品の耐久性が評価されている。

 第二に、充実した販売・整備網とアフターサービスだ。インドネシアは横に広い国土を持つため、整備拠点とアフターサービス体制がなければ「働く車」として顧客の信頼を得られない。日野には約1500人もの整備士がいる。これが強みだ。

 さらに、自社の専門学校を卒業した整備人材を各拠点に配属する取り組みもしており、人材育成に力を入れている。

 ——業種別で見た足元の需要は。

 ◆現在最も堅調なのは物を運ぶ用途の一般輸送系だ。コンビニエンスストア向けの小口配送から、建設資材の大型輸送まで、幅広い物流用途が中心となっている。

 ——鉱業用トラックはどうか。

 ◆資源分野では、特にパーム油(CPO)と石炭の輸送需要が大きい。石炭向けについては、政府が今年の生産計画を絞ったこともあり、控え目な状況が続いている。資源価格や政府の政策次第ではあるが、足元では投資判断がしづらく、顧客にも様子見の姿勢が広がっている。

 ——大きな問題となっているトラックの過積載問題への対応は。

 ◆自動車メーカーとして最も重要なのは安全だ。安全運転への意識を高めるため、顧客向けの講習を実施している。また、技術面でのサポートとして、西ジャワ州プルワカルタにある当社のテストコースを活用した運転講習なども実施している。

大型トラックなどで強い競争力を持つHMSI=同社提供

 ——プラボウォ政権が推進する村落協同組合「赤白(メラプティ)協同組合」向けに、小型トラック1万台を受注した。

 ◆納車を進めており、今年後半に向けて台数を伸ばしていく予定だ。

 ——政府側の計画変更によって、最終的な納車台数が変動する可能性はあるか。

 ◆現時点でそのように考えていない。政府側からも台数変更に関する話は来ておらず、今後の状況を見守ることになる。

 ——大口受注の獲得により、一般顧客向けの供給に影響は出ているのか。

 ◆受注台数が多いため、一部のお客様に納車をお待ちいただくケースが生じているのは事実だが、極力影響が出ないようにしている。

 ——今後の景況感の見通しは。

 ◆世界情勢の緊迫化を受け、インドネシア国内、あるいはグローバル全体で見ても、新規投資を控える流れは大きく変わらないだろう。ルピアも史上最安値に近い水準で推移しており、経済全体が大きく好転する状況にはまだないと見ている。

 一方で、車両の耐久年数を考慮すると、今年後半から来年初頭にかけて買い替え需要が出てくる可能性がある。商用車需要そのものが消えるわけではないため、来年にかけて需要が来ると捉えている。