アジアン鉄道ライター 高木聡 国鉄設備投資計画に「蓄電池車」ーバンドン近郊で、日本企業に参入機会

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 国鉄(KAI)のボビー・ラシディン総裁は3日、国会の公聴会に出席し、中長期の設備投資計画を説明した。中でも注目されるのが、西ジャワ州バンドン近郊区間への「蓄電池車」導入構想だ。全線電化の代替策として、車両側に大容量バッテリーを搭載し、地上インフラへの投資を抑えながら輸送力増強と脱炭素化を進める計画だ。これには日本企業の参入の機会も期待できる。(アジアン鉄道ライター 高木聡、写真も)

蓄電池車両はINKAが試験車両を開発したが、実用化には程遠いものだった。写真は中部ジャワ州ソロ市での試運転の様子

■大型バッテリーを搭載

 蓄電池車は架線のある区間や駅、車両基地などで充電し、架線のない区間では蓄えた電力で走行する。ディーゼル機関車に依存せず、非電化区間でも電車に近い運行が可能になる。導入が想定されているのは、バンドン近郊の普通列車区間だ。

 同地区では現在、毎時1~2本程度の普通列車が設定されているが、運行の中心は機関車が客車をけん引する従来型の列車だ。利用者数は年間で約5%伸びており、1日で最大約8万5000人。通勤・通学需要を担う都市近郊路線としては、定員の限られる客車列車による運行は限界に近づいている。輸送力を高めるには、加減速性能に優れ、頻繁な発着に向く方式への転換が必要になる。

 バンドン地区の電化構想は10年以上前から検討されてきた。過去にはフランス政府の借款を活用し、電化と複線化を一体で進める計画もあった。しかし、フランス側が交流電化方式を求めたことなどから、計画は頓挫した。

 その後、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)前政権下では、まず複線化と駅ホームの近代化が政府予算で進められ、2024年12月に完成。続いて電化工事に入る予定だったが、プラボウォ政権発足後の予算削減を受け、運輸省による電化計画は白紙に戻った。

 ここで浮上したのが、蓄電池車による「部分的な電車化」。全線に架線を張るのではなく、駅や車両基地など限られた場所だけを電化し、車両が停車中に充電する。営業運転中はバッテリーの電力で走行する仕組みだ。

■日系メーカーも候補に

バンドン近郊区間はジョコウィ前政権下で複線化と近代化改良がほぼ完成し、あとは電化を待つのみの状態だった

 車両調達を巡って、ボビー氏は公聴会で繰り返し「国産」を強調した。ただ、蓄電池車については例外的な扱いとなる可能性がある。

 国営車両メーカーのINKAも蓄電池車の開発を進めているものの、充電能力や最高速度などの面で、実用化にはまだ距離がある。公聴会の資料では調達先候補としてドイツのシーメンス、スペインのCAF、中国中車(CRRC)など世界的メーカーの名前が挙げられ、その中には日立製作所の名前も含まれていた。

 日本では既に、JR東日本の烏山線や男鹿線、JR九州の筑豊本線などで蓄電池車が導入されている。このうち男鹿線と筑豊本線では日立製の車両が使われている。バンドン地区の計画でもこれらの蓄電池車導入事例が活用される可能性がある。

■国産重視の例外なるか

 蓄電池車は鉄道車両の中でも比較的新しい分野だ。特に中国を中心に蓄電池技術は急速に進歩しており、国際的なメーカー間競争も激しくなっている。

 インドネシアが新たに動かすこのプロジェクトに、日系メーカーが入り込めるのか。バンドン近郊の「電車化」はKAIの輸送改善策であると同時に、インドネシアの鉄道調達と産業育成の方向性を占う案件にもなりそうだ。

 なお、今回の公聴会は東ブカシ駅で今年4月に発生した列車追突事故の後、ボビー総裁が国会で説明する初めての場となった。安全対策として以前から指摘されていた踏切の立体交差化に加え、赤信号の冒進を防ぐ自動列車防護装置(ATP)の導入検討を進める方針が示されるなど、大きな進展が期待される。