交通インフラ 機関車200両調達で米中2社が競合ー中国は価格と納期、米は現地化アピール

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 国鉄(KAI)によるディーゼル機関車200両の調達で、業者選定が大詰めを迎えている。関係者によると、入札に意欲を示しているのは、中国中車大連機車車輛と米ワブテック(旧GEトランスポーテーション)の2社だ。一時は中国中車との契約で話がまとまりつつあったが、最終局面で状況が変わる可能性もあるという。ジャワ島管内で老朽化した旅客・貨物用機関車を置き換え、輸送力を増強するのが目的で、2027年半ば以降の導入を目指す。
(アジアン鉄道ライター 高木聡)

1977年から導入されているGE製のCC201型機関車がけん引する特急列車(客車はINKA製)。今もなお約120両が現役で、第一線で活躍している

■中国は価格と納期で優位

 インドネシア側は、契約調印から初号機納入まで1年という短納期を求めている。この条件に対応できるのは、中国国内で大量生産体制を持つ中国中車だけとみられる。価格面でも中国中車が優位に立っている。

 一方で、中国中車は基本的に中国国内で完成車両を生産するため政府が重視する国産化率(TKDN)への対応は難しい。低価格と短納期を取るか、国産化政策との整合性を重視するか。KAIの判断が注目される。

■米は現地化で巻き返し

LRTジャカルタはフェーズ1で韓国製車両を導入、建設が進むフェーズ2でも同国製車両を調達する見込み

 これに対し、米ワブテックはインドネシア企業と連携し、可能な範囲で現地製品を採用する方針を示している。さらに、国営車両製造会社INKAで最終組み立てを行い、一定のTKDNに対応できると提案している。

 中国中車が価格と納期を武器にする一方、ワブテックは「現地化」を前面に出して巻き返しを図る構図だ。

■最終判断はダナンタラ

 国営企業の意思決定では、政府系投資ファンドであり、実質的に国営企業の持ち株会社としての役割を強めるダナンタラの意向が反映されやすくなっている。ダナンタラは2月、鉄道車両の輸入を認めないとの考えを示したばかりだ。

 この発言を踏まえれば、TKDNに対応しない中国中車製車両の輸入は、政府の国産化方針と整合しにくい。今回の調達は、KAI単独の経営判断にとどまらず、国営企業政策や産業政策とも結びつく案件となっている。

■戦後の最大パートナーは米国

GEはジョグジャカルタ工場で、定期的な部品洗浄と分解、消耗品を交換するというサイクルを根付かせた

 KAIは現在、ジャワ島とスマトラ島で約550両の機関車を運用している。その9割以上は米国製で、残る一部はドイツ製だ。アジア・オセアニア地域で、中国製の営業用機関車を保有していない鉄道事業者は珍しい。

 背景には、戦後の無煙化を米国が積極的に支援してきた歴史がある。車両調達、保守支援、部品供給まで、GEとその現地パートナー企業が長く担ってきた。KAIのジョグジャカルタ工場は、優れた機関車整備拠点としてGEから表彰を受けたこともある。

 13年以降に導入された150両では、台車枠などの鋳物部品にインドネシア製品を採用し、現地組み立ても行われた。こうした整備・部品供給体制があるため、1970年代に導入された機関車でも大きな故障なく、時速100キロ超での走行を続けている。ただ、老朽化は避けられず、今回の調達では主に70~80年代導入車両の置き換えが想定される。

■米中外交を映す調達案件に

 米国にとって、今回の入札は負けられない案件である。インドネシア側にとっても、米国との相互貿易協定や関税交渉を踏まえれば、米企業への一定の配慮が求められる局面にある。米国からの機関車輸入が無関税となれば、価格面でもワブテックにとって追い風となる可能性がある。

 一方で、インドネシア政府には、ジャカルタ―バンドン高速鉄道の債務交渉で中国側から譲歩を引き出したい思惑もある。中国企業を選ぶのか、米企業を選ぶのか。KAIの機関車調達は、現政権が米中をどう天秤にかけるのかを映す案件となりそうだ。